2018 Fiscal Year Research-status Report
インド北東部多民族社会の日常が有する言説化したグローバル問題に対するレジリエンス
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18K18254
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Research Institution | Nara Women's University |
Principal Investigator |
浅田 晴久 奈良女子大学, 人文科学系, 准教授 (20713051)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | インド / アッサム州 / マニプール州 / 生態環境 / 生業活動 / 境界地域 |
Outline of Annual Research Achievements |
初年度にあたる平成30年度は、インド北東部の多民族社会の日常に関する事例を複数の地域において収集することから研究を開始した。具体的には8月と3月にインドのアッサム州とマニプール州を2回ずつ訪問して現地調査を行った。 アッサム州では、定点観測を続けているグワハティ近郊の村落において、住民に対して生業活動と日常行動に関するセンサス調査を8月から実施した。3月に回答紙を回収し、パソコンへの入力作業を行っているところである。分析によってカースト階層・経済階層による生業活動および日常行動の差異を明らかにする予定である。また、アッサム=ブータン国境地域の生業活動についても予備調査を行った。ここは山麓の粗粒土壌が卓越する地域で地表水が得にくいため、河川から水路を網目状に引いて耕地に灌漑を施している。水路の維持管理に関わる民族間の関係について聞き取り調査を行った。アッサム州内の2地点の比較から、同じ州内でも居住場所の生態環境の違いによって、各民族の日常のあり方が異なることが示唆される。 マニプール州では、ロクタク湖を訪問した他、地域住民の生業と政府による開発に関する資料を収集した。その結果、州政府主導で進められたダム開発によって、湖周辺に住む住民の生活が影響を受けていることが分かった。また、インド・ミャンマー国境地域を訪問し、国境をまたぐ交易活動が住民の生活にどの程度の影響を与えているかという視点から観察を行った。ミャンマー側からインド側へ多数の商品が流入しているものの、現時点では住民の生活を大きく変容させるには至っていないと判断した。マニプール州の調査はまだ予備的段階であるが、国境地域では域外からの影響がアッサム州とは異なった形でみられるため、地域比較の意味で来年度以降も現地調査を継続していく予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
アッサム州では調査村落において村内在住のアシスタントの協力を得て、センサス調査を実施することができた。また、ゴウハティ大学地理学科の博士研究員の協力もあり、州内の生態環境が異なる地点で比較調査を行う準備を整えることができた。マニプール州の調査はまだ予備的段階であるが、同じインド北東部でも州によって域外からの影響が異なって住民生活に表れるという視座を得ることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
調査村落で実施したセンサス調査の結果の分析を進めるとともに、各調査地域で観察された事象については、さらに詳しく聞き取り調査を行うなどしてインテンシブな事例分析を行う予定である。
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