2018 Fiscal Year Research-status Report
北タイの住民組織による水資源管理のあり方の変遷と社会関係資本
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18K18260
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Research Institution | Hosei University |
Principal Investigator |
東 智美 法政大学, その他部局等, 特別研究員 (70815000)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 住民組織 / 水資源管理 / 社会関係資本 / 北タイ / 灌漑システム / 統合水資源管理 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、北タイの伝統的な灌漑システム「ムアン・ファーイ」の共同管理のあり方と自己改革の変遷、王立灌漑局との関係の変化を跡付けたうえで、1950年代から政府主導で建設・管理が行われてきた大規模灌漑管理システムを比較対象とし、水配分や紛争解決といった資源管理のあり方の違いを分析することで、住民ネットワークのなかに蓄積されてきた「横」の社会関係資本と、住民ネットワークと政府の間で構築される「縦」の社会関係資本の相互作用が、天然資源の管理において、どのような影響を及ぼすのかを明らかにすることを目的とするものである。さらに、資源管理システムが大きく変容した後、それ以前の資源管理システムの中で醸成・強化されてきた社会関係資本が、新たな資源管理システムの中でどのような機能を果たすのかについて明らかにすることを目指している。 一年目は、まず、天然資源管理における社会関係資本と政府の介入の関わりについて論じた先行研究、タイの統合水資源管理に関する先行研究を整理したうえで、2002年の現地調査のデータを再検証することで、「縦」と「横」の社会関係資本が灌漑管理のあり方にどのような影響を与えてきたかを分析した。 そのうえで、2018年9月と2019年2月に北タイのチェンラーイ県において、現地調査を実施した。現地調査では、(1)村の有力者及び水利組合役員からの聞き取り、(2)ムアン・ファーイ「ジャオウォー堰」と灌漑局によって運営されてきた「メーラーオ堰」の利用者の世帯調査、(3)灌漑局からの聞き取り、(4)現地の研究者からの聞き取りを行い、水資源管理をめぐる各アクターの関わりや意識を調査した。 2018年11月と2019年1月には、滋賀県東近江市の愛知川沿岸土地改良事業の対象地域を訪問し、大規模灌漑システムの下での住民による水資源管理の課題を明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
計画通りに進展している。対象としている伝統的灌漑システムのコンクリート化工事が計画通り開始され、岐路に立つ住民組織の構成員や、統合水資源管理を目指す王立灌漑局の職員などへのインタビューを順調に進めることができた。また、比較対象として、当初予定していたよりも範囲を広げ、政府灌漑事業の受益地でのインタビュー調査を実施することができた。 さらに、日本の研究者との研究協力関係を構築することができ、大規模灌漑システムの下での住民による灌漑管理のあり方が課題となっている滋賀県の愛知川沿岸土地改良区を2度訪問し、土地改良区の職員や水利総代からの聞き取りを実施することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
2019年9月に2週間程度の追加調査を実施した後、成果を学術論文にまとめ、学会発表を行う。
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Causes of Carryover |
2018年度の予算については、2019年2月までに全て執行したが、事務手続き上の事情により、立替払い分の支払いが次年度に持ち越された。
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