2018 Fiscal Year Research-status Report
インドネシアにおける歴史地震・火山噴火の被害記録の復元と災害対応の変遷
Project/Area Number |
18K18269
|
Research Institution | Research Institute for Humanity and Nature |
Principal Investigator |
梶田 諒介 総合地球環境学研究所, 研究部, 研究員 (40811112)
|
Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
|
Keywords | インドネシア / 歴史地震 / 歴史資料 / 地方新聞 / スマトラ島 / 復元 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、インドネシアにおける歴史地震・火山噴火について、オランダ植民地時代の歴史資料を用いながら過去の地震記録および火山噴火記録を復元し、さらにインドネシアの地域社会における歴史的な災害対応と変遷を明らかにすることである。H30年度は、主に1926年6月28日に発生したスマトラ島西部地震に関してオランダ語文献の調査を進めた。この地震はスマトラ島西部に位置する西スマトラ州の内陸部を中心に発生したものであり、広い範囲に渡って揺れによる倒壊被害や湖岸沿いの村が津波により被害を受けたものであった。当時の報告書や地方新聞を用いることで、地域社会の被災状況を調査した。 研究成果として、第37回日本自然災害学会学術講演会の「地震動・火山・地盤」セッションにおいて、「植民地期報告書や地方新聞を用いた1926年6月28日インドネシア・スマトラ島西部地震による社会的影響の復元」と題した報告を行った。本報告では、上記の研究内容について発表を行い、地震の揺れによる家屋の倒壊状況や地域社会における経済的損害について分析し、考察を加えたものである。本セッションでは自然災害の専門家とも意見交換を行ったことで、インドネシアの地震研究における歴史資料の有用性やその検証について議論ができた。主に地方新聞の記事を中心に分析を試みたため被災地域周辺の状況が中心であったが、今後は貿易報告書や農業報告書といった他史料も用いつつ災害による影響分析を行い、論文執筆につなげる。また、18-19世紀の地震・火山噴火に関しても地域を広げつつ分析を続けていく計画である。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究課題の進捗状況として、歴史的な地震災害発生後の各地域における人的・物的被害状況の復元および考察に関しては、まず1926年スマトラ島西部地震を対象としたことで、順調に進んでいる。植民地期の地方新聞については、オランダのデータベースより電子媒体で閲覧することも可能であるため、日本にいながら調査を進めることが可能であった。引き続き、他の地域にもひろげて災害記録の復元を実施する予定である。一方、国立図書館、大学図書館などにおける集中的な現地調査は当初の計画よりやや滞っている。初年度はインドネシア国立図書館にて文献調査をするために渡航したが、インドネシアにおける研究調査許可および滞在ビザ更新のために、現地にて研究・技術・高等教育省や地方移民管理局における一連の手続きを遂行しなければならず多くの時間を取られた。昨今のインドネシアでは外国人の滞在に対する規制や研究活動への制限が厳しくなってきており、その影響で各種更新手続きに反映されたものである。また、オランダのライデン大学図書館での歴史地震・火山噴火に関する文献調査も実施する予定であったが、本務先の研究用務のため、主に植民地時代の気象記録について文献調査を実施したため、地震・火山噴火に関する文献調査は次年度に集中的に実施することにした。本研究課題計画は計4年であるため、全体としては概ね順調に進展していると評価でき、今後も大きな変更はなく続けていく予定である。
|
Strategy for Future Research Activity |
R1年度では、インドネシアおよびオランダにおける現地調査をR1年8-9月およびR2年2-3月に集中的に実施する予定である。ライデン大学の特別資料室にて『ジャワ-その形状、植物被覆および内部構造-』全4巻、『蘭印自然物理学誌』全100巻、『火山学および地震学報告書』などのオランダ語史料の調査を実施する。さらに、オランダ国立公文書館では、マイクロフィッシュにて保管されている『郵便報告書』の閲覧をし、自然災害に関連する部分を見つけ出す作業も開始する予定である。このマイクロフィッシュは膨大な量であるため、今後3年間を通して時間をかけた作業が必要である。自然災害は18世紀から19世紀に発生したものを対象とし被害状況の復元、地域社会がどう対応したのかを調べる。また、植民地政府の自然災害に対する対応や統治に対する影響を考察し、その歴史的変遷を辿ることを目指す。Delpher Krantenという植民地期の新聞を閲覧できるデータベースを用いることで、地方新聞『Javasche Courant』や『Sumatra Courant』の災害関連記事の調査を並行して進める。成果発表としては、学会における報告を予定しており、さらに、これまでの研究内容に関して論文執筆とその投稿を国際学術誌もしくは国内学会誌へすることを目指す。 インドネシアにおける研究調査許可および滞在ビザに関しては、インドネシア国内の動向を注視しつつ、円滑に手続きを進められるようにしたい。また、R1年度よりあらたに大学非常勤講師として語学の授業を複数コマ受け持つことになったため、研究のための渡航可能時期が限られてしまうが、研究活動に影響が出ないよう調整しつつ進めていく予定である。
|
Causes of Carryover |
当初の計画では、初年度のオランダへの旅費として計上していたが、本務先の研究用務の関係で別経費を用いて渡航することになった。そのため、本来本科研費課題として計上した初年度旅費はインドネシア渡航のみとなった。次年度使用額として生じた助成金については、次年度のオランダ旅費に使うことを計画しており、現段階ではR2年2月から3月の期間に1ヶ月程度の旅費として計上する。
|
Research Products
(1 results)