2020 Fiscal Year Research-status Report
台湾の農村地域における観光資源の利用実態の解明に向けたビッグデータによる空間分析
Project/Area Number |
18K18274
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Research Institution | Research Institute for Humanity and Nature |
Principal Investigator |
黄 エンケイ 総合地球環境学研究所, 研究部, 研究員 (40750526)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | グリーンツーリズム / 地域資源 / データベース / 空間分析 / 観光開発 / エコツーリズム |
Outline of Annual Research Achievements |
データベースの構築当初では616集落の農村再生計画書を予定していたが、2020年では832集落まで増加した。計画書の整理に時間を費やしたが、データベースの作成は2020年度の前半に完了した。今年度の後半では、テキストで読み取れた情報の地図化の作業を進めてきた。それら地理空間情報の活用と分析で得た結果は、次の年度で学術成果として提出できると期待している。具体的には集落ごとに有する観光資源と農地利用、交通アクセスとの関係性を解明することとなる。 特殊事例の研究については2つの方向で取り組んでいる。一つは、宜蘭県のレジャー農業区に関する研究で、もう一つはマングローブに関する研究となる。宜蘭県は台湾すべての行政区で最も多くのレジャー農業を有している地方である。レジャー農業区はGTの代表となる地域で、整備と登録申請から成立以降の管理に関わる施策に関するインタビューと情報収集は2019年度に完成した。今はレジャー農業区の管理と評価指標を内容としてまとめているところである。もう一つのマングローブ研究は、この一年間では台湾大学の協力で遂行することができた。淡水河の下流域には世界最北端と言われるマングローブ林が台北市の沿海エリアに広がっている。淡水河河口のマングローブが保護区に指定されて以来、エコツアーの利用者が絶えずに訪れている。高い観光価値を有しているため、本研究ではレクリエーションの視点を兼ねて、生態系サービスへの寄与についても調査してきた。現在では調査の結果をまとめ、書籍と論文として出版できるように努めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
本研究では,GTの先進国とされる台湾における全国規模のGTデータベースの構築と活用を通して、農村地域の観光事業を推進するためのノウハウと成功を左右する要因を導き出すことを目的にした。GTデータベースの構築は2つの方向が含まれている。 一つは農村計画事業に対応する計画書のテキスト分析、もう一つはGTに関連するビッグデータによる地理情報レイヤーの作成となる。832集落を対象に、集落の基本情報・発展のビジョン・自然と人文景観・農作物と観光資源を項目別に整理する作業が完了した。現在頻出語抽出の作業を行っている。また、ビッグデータによる地理情報レイヤーの作成については、農家民宿、農業関連資源土地利用情報、交通網と駅の位置情報、湿地、国立公園・風景区などのマッピングが完成できた。特に、農家民宿について、台湾では、農家民宿の規制緩和と住民参加型村づくりの促進などの影響で、民泊経営の状況が急速に活発化してきた。その活発化の指標として、農家民宿の数が2003年の309軒から近年の7000軒以上に成長した。本研究では2015年、2017年と2020年の農家民泊の登録住所を収集し、ポイントデータを作成した。農業関連資源の分布は、事例となる832集落における割合の計算も完成した。832集落の類型化に必要なデータ整備がこれで整った。 2020年度の現地調査については、コロナの影響で出国することができないが、台湾大学の協力で、マングローブの研究が進行できた。しかし、地元住民を対象にしたアンケート調査は現地を訪れないため、計画当時通りに実施することはできなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
コロナの影響がいつまで続くか不明のため、当初の研究計画にいくつかの方向転換を予定している。現地で行う調査は、遠隔で採取できるデータを活用することにする。例えば、集落のGTの魅力推算は、アンケート調査の代わりに観光スポットの観光客数のマッピングと集落との位置情報で推計する。832集落の全リーダーへのアンケート調査の代わりに計画書の解読で、集落で行われている観光事業の形態を把握する。GTにかかわる集落の地域資源データベースの構築は完成した。それらの情報をマッピングし、GTの空間的相関やGT発展の状況に影響を与える地理適用を解明することが期待できる。なお、特殊事例に対するフィールド調査については、現在、GTが特に発達している宜蘭県で必要なインタビューと情報収集はすでに完了したため、レジャー農業区の管理と評価指標を内容としてまとめているところである。なお、マングローブに関する研究の結果についても書籍化と論文化の作業を行っている最中である。
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Causes of Carryover |
調査地が海外となり、パンデミックの影響で出国することが出来なかった。それ故に、旅費はほとんど発生しなかった。本来現地で実施すべき調査に予定している謝金の支出もほとんど叶わなかった。以上の理由で、未使用額が生じた。現地における調査は来年度の夏以降であれば実現できると考えており、今年度に使えなかった予算を来年度に使用する。
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