2019 Fiscal Year Research-status Report
Problematic Behavior of Tourists in Less Developed Countries
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18K18279
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Research Institution | Nara Prefectual University |
Principal Investigator |
薬師寺 浩之 奈良県立大学, 地域創造学部, 准教授 (70647396)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 観光者行動 / 観光倫理 / 持続可能な観光 / 開発途上国 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究二年目である2019年度は、開発途上国における国際観光者の問題視される行動と、国際観光者が認識する「責任ある観光行動」に関する調査と分析を行った。分析は、タイ・パンガン島で実施したバックパッカーツーリストの行動に関する本研究の調査で得た資料だけではなく、過去に東南アジア地域で行ったバックパッカーツーリストとボランティアツーリストの行動に関する調査で得た資料も用いた。上記3件の調査から分かったことは、以下の通りである。 1.観光者は、現地の文化に対する無知や誤解、さらに自分自身の都合・快楽や快適性を追求する一瞬の行為が他者を不快にさせたことはあったかもしれないが、自分自身の観光行動は責任を伴っている、と評価する傾向がある。 2.観光地側の各利害関係者は、観光者の行動に対してやや批判的である。 3.上記1と2から分かることは、観光者の行動に関して、観光者自身の評価と地元民による評価の間にはギャップがあることである。特に観光者の高い自己評価の背景を理解することが、観光者の問題視される行動や観光者が認識する「責任ある観光行動」をより深く理解するうえで重要であると考える。 4.観光者の高い自己評価は、Urry(1995)が指摘する「審美的コスモポリタニズム」の概念で説明できると考える。これは、観光者が自分自身を可動力、好奇心、寛大さ、順応性があり、社交的で、さらに「違い」を消費することを要求し、それを喜ぶ有能な人間である、と評価することである。つまり、このような美的感覚が自己に対する自信や異文化に対する美的な解釈、さらに異文化世界に対する倫理的価値観を形成させる。さらに、「責任ある観光者」としての自己評価につながったと考える。この「審美的コスモポリタニズム」は、観光者の充実した旅行経験や満足形成に大きな影響を及ぼす一方、観光者が自分自身の行動を批判的に捉える機会を妨げるとも考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画では、2019年度は開発途上国の観光地における観光者の問題視される行動に関わる4点の考察(①観光者の問題視される行動の内容の考察、②観光者の問題視される行動に対する観光地側の各利害関係者の認識と解釈に関する考察、③観光者の問題視される行動が引き起こされる要因に関する考察、④観光者の問題視される行動がもたらす持続可能な観光への阻害に関する考察)を現地調査を通して実施する予定であった(2018年度実施状況報告書【今後の研究の推進方策】参照)。調査地(タイ・パンガン島)での時間的制約や、被験者への接触の難しさなどから、これらのことが十分に理解できたとは言えない。 しかしながら、調査時における観光者や現地の観光の利害関係者とのインフォーマルな会話や、過去に行った類似の調査(【研究実績の概要】参照)から、観光者の自己の行動に対する高い評価とその背景を考察することはできた。この考察を踏まえて、中間報告として観光者が認識する「責任ある観光行動」について、さらに観光者の審美眼や「審美的コスモポリタニズム」について国際学会で2件、国内学会で1件口頭発表を行った。これらの報告で得られたコメントを、今後の研究に生かす予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
2020年度は、2019年度に行った考察をより深化させ、学術論文で発表する予定である。 2019年度に十分に行えなかった現地調査を実施する予定であったが、新型コロナウイルス感染症の世界的流行によって海外渡航が難しいため、研究期間を延長して2021年度以降に実施することも検討している。
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Causes of Carryover |
2019年末に刊行された東南アジアの観光や観光倫理に関する洋書を3冊購入する予定にしていた。2020年1月に発注しようとしたところ、出版社の事情で2019年度末までに納品されないことが分かったため購入を断念し、書籍購入費(43,217円)が余った。 2020年4月、これらの書籍を購入した。
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Research Products
(4 results)