2018 Fiscal Year Research-status Report
Study on Promotion of Migration and Settlement from the Viewpoint of Value Co-Creation
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18K18280
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Research Institution | Nara Prefectual University |
Principal Investigator |
大和 里美 奈良県立大学, 地域創造学部, 准教授 (00446030)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 移住・定住 / 竹富島 / 価値共創 / S-D logic / オペラント資源 / プロセス・マネジメント |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、S-D logicにおける価値共創の視点から、観光客などの外部者と地域との関係性を深め移住・定住に繋がる価値を創造するメカニズムを明らかにすることである。 人口減少が進む中で、移住・定住を促進する多くの地域の自治体が、移住者にとって魅力的な支援を工夫している。そこでは、地域側が価値の提案者となり、外部者が価値判断するという価値共創の形が一般的である。しかし、元々の住民との間で軋轢が生じて定住に至らなかったり、地域が育んできた文化や伝統を損なったりというようなことも見られ、移住を促進しても長期的な地域の発展には繋がらない場合がある。 竹富島では地域側が外部者に対して価値提案を行うだけでなく、外部者が提案する価値を地域が認めたときにはじめて移住者を受け入れる仕組みが作られており、公民館を中心とした地域の住民が積極的な価値共創の場の創出や「島習い」と呼ばれる習慣による価値共創の促進などによってそのプロセスをマネジメントしていた。また価値を生み出す住民側のナレッジやスキルとして「うつぐみの精神」をはじめとする複数のオペラント資源が認められたが、それらは竹富島の歴史や文化の中で培われたものであった。なお、島内の観光関連企業の求人や個人的な島民との関係を通じて島に移住する場合には、地域が管理するプロセスを経ない場合もある。そのような移住者にとっては、移住者間のネットワークが価値を生み出す文脈に大きな影響を与えていた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2018年度に計画していた竹富島(沖縄県八重山郡竹富町)での現地調査を2018年7月、2018年12月、2019年2月に実施し、移住者(20名)及び地域側関係者(竹富町移住促進担当者、公民館長、NPO法人スタッフ)へのインタビューと地域での参与観察を行った。当初の計画では、現地調査は2018年9月から2019年3月に実施する予定であったが、9月は竹富島の経済の中心である観光産業にとって繁忙期に当たるため、この時期を避けて多くの調査対象者に時間的な余裕がある7月初旬に1回目の調査を実施した。 竹富島での3回の現地調査から、①価値共創のプロセスと文脈価値を明らかにすること、②価値を生み出すために重要なナレッジやスキル(オペラント資源)を明らかにすること、③地域における価値共創のマネジメントについての知見を得ること、という具体的な研究項目について多くの示唆に富んだ結果を得ることができ、2017年度に行った予備調査と7月の調査から得た結果を9月に行われた地域活性学会で発表した。 対象地である竹富島についての歴史・文化に関する文献調査は予定通り進めることができたが、マーケティングを中心とした関連する分野の先行研究の整理は未だ十分とはいえない。文脈価値を明らかにするためには、価値共創の文脈に影響を与える主体者とコンテクストの関係を規定する理論などについての理解が重要となるため、今後理論研究を進めるために一層の努力をしたい。
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Strategy for Future Research Activity |
理論研究を進めるとともに、更なる実証研究によって研究項目の精緻化を図る。 2019年度は、同じ竹富町に属する西表島においてインタビュー調査を行う予定であった。しかし、観光産業やサトウキビ産業の繁忙期を避けた限られた期間内に調査を行う必要があること、調査対象に予定していた集落に近い港は、冬季には天候によって使用できないことが多いこと、移住者が居住しているそれぞれの集落が離れており移動手段も限られていることなど、研究目的を達するために必要なサンプル数を確保することが困難と思われる複数の要因が認められた。 そこで調査対象地を竹富町と同様に人口が増加基調で推移している石垣市に変更し、移住・定住促進事業を展開している一般社団法人の協力を得て現地調査を行う。また当初予定していたインタビュー調査に加えアンケート調査を実施する。 文脈価値を共創するコンテクストや移住者間の関係についてより多くのデータを収集することで、竹富島での調査結果の妥当性を検討し、研究項目についての分析を進める。
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Causes of Carryover |
先行研究と関連分野に関する図書の購入が当初予定していたより少なかったことが次年度使用額が生じた理由である。 理論研究を一層進めるために国内外の文献を収集するとともに、本研究課題に関連した学会や研究会に出席して情報収集と最新の研究動向の把握に努める。
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