2019 Fiscal Year Research-status Report
A Study of Tourism Experiences and 'Context Practices' in Islamic Tourism
Project/Area Number |
18K18283
|
Research Institution | Takasaki City University of Economics |
Principal Investigator |
安田 慎 高崎経済大学, 地域政策学部, 准教授 (60711653)
|
Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
|
Keywords | イスラミック・ツーリズム / イスラーム / 観光経験 / コンテクスト / 資源フロー |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は、観光経験がイスラーム的にいかに位置づけられるのか、その社会的共有の実践とそれを生み出す社会環境を解明してきた。具体的には、フィールド調査ではインドネシア、モルディブにおけるイスラミック・リゾートの特徴の分析や、セネガル、シンガポール、UAEにおけるイスラーム文明遺産の保全と観光振興をめぐる調査を行った。文献調査では、文献上のイスラーム文化遺産論や巡礼旅行記の分析を通じて、いかなる観光経験のコンテクストが人びとの間で実践・共有されているのかを分析してきた。さらに、イギリスからラッザーク・ラージ氏を招聘して2020年2月23日に国際ワークショップを開催し、2年間の研究成果内容を議論したうえで、次年度のまとめに向けた研究の方向性を示した。 一連の分析を通じて、大きく2つの議論が浮かび上がってきた。1点目は、宗教的な事物をめぐって蓄積される観光経験のコンテクストを媒介として、ヒトやモノ、情報の実践ネットワークが構築され、継承されていく論点である。その際、観光経験のコンテクストを導き出していく際、他者の観光経験のコンテクストを参照しながら、自分のを規定していく姿である。その際、旅行記をはじめとするメディアが主要な媒介項となっている点を示した。 2点目は、特定の観光経験のコンテクストに個人の経験をすり合わせる際に発生する個人の資源フローの存在である。個人の観光経験をイスラーム的コンテクストに位置付ける際に、そこでは多様な資源(知識、資金、労力、時間)のフローが動員される。そのなかでも、観光経験を構築するための貯蓄や投資といった資金の存在が、より広範な資金フローのなかに位置付けられることで、個々の観光経験がコンテクストのなかに意味づけられる点を明らかにした。 以上の2点の成果から、観光経験を資源フローのネットワークと、そのなかでの社会的実践から分析する重要性を明らかにした。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度の研究内容や、2020年2月23日に開催した国際ワークショップの内容を踏まえ、観光経験のために動員される資源フローのネットワークに関する分析が重要である点が明らかになった。すなわち、既存の研究では製品の生産や個人の消費(消費者行動)に基軸が当たっていたが、それらの財やサービスを消費するために動員される個人や社会の資源(資金や時間、労力、知識)をいかに確保して観光経験を構築するのか、という資源フローをめぐる議論の重要性が指摘できる。個人レベルである特定の宗教的コンテクストに基づいた観光経験を獲得するためには、他者の宗教的なコンテクストを参照し、模倣していくことが求められる。その際、他者の観光経験の探索や理解を行ったうえで、その独自性を他者に対して示すために、多種多様な資源フローが活用される。個人が活用できる資源が限られているなかで、外部の多様な資源フローを活用することで、個人の経験がより社会的実践となっていくと捉えることができる。特に、宗教コンテクストを獲得するために費やされる資金は、個人の貯蓄や金融機関をはじめとする外部の資金フローを活用することで達成されている現実が横たわる。 その点、観光経験のコンテクスト・プラクティスは、旅行や観光、レジャーという領域に留まるものではなく、より広範なライフスタイルや人生哲学といった文脈のなかでこそ把握されるべきである。その際、個人や周囲の社会環境のなかで動員でできる資源の存在の重要性をあげることができる。そのなかでも、資金フロー(貯蓄行動や投資行動)を分析することが、特定の観光経験のコンテクスト・プラクティスを達成する際の重要な要素となっている。これらのものを社会的実践にまで高めていく資源フローのプラットフォームの存在、そのなかでも資金フローをめぐる多様なアクターの相互交渉にこそ着目すべきと考えるに至っている。
|
Strategy for Future Research Activity |
これまで解明された議論を踏まえたうえで、最終年度には観光経験のコンテクスト・プラクティスを構築する資源フローを、特にコンテクストを構築するために費やされる資金フローの特徴や変容に着目していくことで、モデル化を行っていきたい。特に、イスラーム経済学を中心に展開されてきた、個人や社会で動員できる資源フローの拡張をめぐる動きの議論を踏まえながら、観光経験のコンテクスト・プラクティスがいかなる資金フローを生み出し、個人や社会のライフスタイルや思考を規定していくのかを考えていきたい。 今年度は新型コロナウィルスの影響により国外調査と国外からの研究者の招聘が困難であることから、関連文献・情報の収集と分析を通じて研究を推進していく。さらに、オンライン上で既に構築している国際研究者ネットワークを活用しながら、国際共同研究をめぐる今後の発展可能性を探っていく。その際、イスラーム経済学とイスラミック・ツーリズムの研究者を中心に、観光研究とイスラーム経済学を軸とした新たなイスラミック・ツーリズム研究の可能性について探っていきたい。 さらに、国際共同研究の議論を踏まえたうえで、関連する学会誌に英語特集論文を掲載することを目標として、関係者とともに日程調整を行っていきたい。
|
Causes of Carryover |
英文校閲費が予定額よりも安く済んだ為。
|
Research Products
(7 results)
-
-
-
-
-
-
[Book] Spiritual and Religious Tourism (CABI Religious Tourism and Pilgrimage Series)2019
Author(s)
Ruth Dowson, Razaq Raj, M. Jabar Yaqub, Maximiliano E. Korstanje, Shin Yasuda, Jaffer Idris, Jahanzeeb Qurashi, Jane Legget, Suzanne Histen, Luana Moreira Marques, Vicente de Paulo da Silva, Jean Carlos Vieira Santos, Dane Munro, Tadeja Jere Jakulin, Onur Akbulut, Yakin Ekin, Richard Keith Wright
Total Pages
208
Publisher
CABI
ISBN
9781786394163
-