2020 Fiscal Year Research-status Report
A Study of Tourism Experiences and 'Context Practices' in Islamic Tourism
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18K18283
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Research Institution | Takasaki City University of Economics |
Principal Investigator |
安田 慎 高崎経済大学, 地域政策学部, 准教授 (60711653)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | イスラーム / ツーリズム / 観光経験 / コンテクスト・プラクティス |
Outline of Annual Research Achievements |
2020年度は、新型コロナウィルスの影響で国内外でのフィールド調査や文献資料収集、研究ネットワークの構築が困難になったことから、これまでの国内外における研究調査のなかで収集してきた研究データを基に、分析と研究成果の公表を行ってきた。その結果、イスラミック・ツーリズムにおける観光経験が、外部のエージェントに仮託されながら、市場のなかで大衆に消費されていく様子を明らかにし、その内実を描き出していった。具体的には、宗教ツアーにおける宗教ガイドをめぐるプロモーション戦略の隆盛と社会における浸透や、先行する旅行記の消費実態や観光経験の模倣と変容をめぐる議論を取り上げた。一連の成果から、イスラミック・ツーリズムにおける観光経験のコンテクスト・プラクティスが、必ずしも市場における経済原理やマーケティングの論理だけで展開されるものではなく、それぞれの市場が置かれた社会環境との関係や、そのなかでの利害関係者たちの相互交渉のなかで再帰的に構築されていく点を確認した。そのうえで、イスラミック・ツーリズム市場がイスラーム的価値観を用いたガバナンス機能を利害関係者たちの間で浸透させていき、新たなコミュニティを構築していく姿を、特に2019年度のモルディブにおける調査内容を踏まえながら描き出してきた。 その他にも、新型コロナウィルスの全世界的な影響の拡大が、イスラミック・ツーリズム市場にいかなる影響を及ぼしているのか、市場動向を調査すると同時に、その一部を研究成果として公表してきた。 他方で、研究課題を総括する時間を確保することが困難であったため、後述する通りに1年間の研究期間の延長を行ったうえで、改めて研究課題を総括する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本来であれば2020年度で終了するはずであった本研究課題であるが、国内外におけるフィールド調査や文献収集、研究者ネットワークの構築が困難であったことから、当該研究課題を総括することが困難であった。特に、2020年2月に開催した国際ワークショップでの成果で既に、イスラミック・ツーリズムのコンテクスト・プラクティスが、単なる旅行や観光、レジャーや、一過性の欲求を満たすための消費行動という領域に留まるものではなく、より広範なライフスタイルや人生哲学といった文脈のなかでこそ把握されるべき点を確認した。この論点について、2020年度の研究課題とすると同時に、本研究課題の総括として概要を示し、次の研究課題へと接続を考えていたが、研究計画が遂行できなかったことから、未完了のままに留まっている。2020年度に刊行したいくつかの論文のなかでその概説的な論点は指摘したが、それらを統合する理論的なまとめについては、まとめ切れた訳ではない。そのため、本研究課題を2021年度までの1年間延長する申請を行った。 他方で、本研究課題で蓄積してきた研究データを用いて、多くの研究成果を公表してきた。その結果、イスラミック・ツーリズムにおける観光経験のコンテクスト・プラクティスの実態やその多様性については、明らかになってきたと言える。特に、本研究課題が当初目指してきた、消費者行動論やマーケティング分析に基づいた理解とは異なる、イスラミック・ツーリズムをめぐる市場環境や、周囲の社会環境との相互交渉の在り様は、一定の研究の蓄積と成果公表を行ってきた点で、ある程度は進捗していると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
既に指摘した通り、イスラミック・ツーリズム市場の発展にともなって拡がりを見せる資源フロー(個人・社会の資金や時間、労力、情報、知識のフロー)や、そのなかで構築される市場環境・社会環境がいかなるものであるのか、2020年度までにその概要を示すことができなかった。2021年度には、本研究課題を方向付けることによって、当該研究課題の総括を行っていきたい。一連の総括を踏まえて、当初の研究課題の目的にあった通り、従来の消費者行動論やマーケティング分析を基軸としたイスラミック・ツーリズム理解とは異なった姿を描き出していく。 ただし、2021年度も新型コロナウィルスによって引き続き国外調査や国外の研究者との研究ネットワークの構築が困難であることから、文献調査・理論研究を主として、研究成果の発信を基軸に置きながら、本研究課題を取りまとめていくことを目指す。その際、文献資料を収集、分析しながら理論構築を行っていく。また、オンライン環境が整備されてきた現状を踏まえ、国内外の研究者との連携を図りながら、本研究課題の議論を深化させていくとともに、総括を行っていく。 その他にも、新型コロナウィルスの全世界的な流行が、イスラミック・ツーリズムの観光経験のあり方にいかなる影響を及ぼしているのかも加味しながら、本研究課題を推進していく。また、後継の研究課題として採択された共同研究(「イスラミック・ツーリズムにおける観光経験の宗教資源フローをめぐる実証研究」、研究課題21H03719)との接合を意識しながら、本研究課題をまとめていくことを目指す。
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Causes of Carryover |
本年度、新型コロナウィルスの流行にともなって国外フィールド調査や現地の文献収集を行うことが困難であったと同時に、観光や調査自体が国や自治体等の要請に従って実施することが困難になったために、全ての国外調査・国内調査を取りやめた。2020年度後半での状況の改善を見込んで未使用でいたが、国外調査・国内調査のいずれも実施することが困難であった。 また、本務校、ならびに非常勤先でのオンライン授業対応や、その他大学業務に関わる学務・教育で多忙を極めた点や、他の研究課題での成果公表を優先したために、当該研究課題については、次年度以降に繰り越す決定をした。 以上の情勢を踏まえたうえで、研究計画全体を練り直したうえで、2021年度に改めて全体の総括を行う研究計画の変更を行ったうえで、研究課題の期間延長を申請し、認められた。
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Research Products
(8 results)