2019 Fiscal Year Research-status Report
近現代イスラームにおける「排除」と知識人に関する研究
Project/Area Number |
18K18292
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
後藤 絵美 東京大学, 日本・アジアに関する教育研究ネットワーク, 特任准教授 (10633050)
|
Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
|
Keywords | イスラーム / 現代 / 排除 / 知識 / 近代主義者 / 異端者 / 女性 / 復古主義者 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、近現代におけるイスラーム的知識の「統合」の中にあらわれる「排除」の現象に着目するものである。その際、20世紀エジプトの事例から、イスラーム的知識の「統合」と「排除」の過程を詳細に辿り、その論理と権力構造を、「近代主義者」、「異端者」、「女性」、「復古主義者」の事例から明らかにすることを目指す。二年目にあたる平成31/令和元年度は、「排除」の対象となった事例として「近代主義者」、「異端者」、そして「女性」に関する研究をさらに進めた。 「近代主義者」としては、法律家カースィム・アミーン(1863-1908)の著作の分析と、長期にわたるその評価の移り変わりの検討を継続した。この点について、共同研究者の岡崎弘樹氏とアミーンの著書の翻訳および研究書の出版企画についての話し合いも行った。さらに、アミーンに関する論文執筆に取り組んできた。 「異端者」の事例については、ナスル・ハーミド・アブーザイド(1943-2010)について、2019年6月に東京大学で開催された国際会議および、2019年11月にマルタ大学で開催された国際会議にて報告した。 「女性」については、20世紀初頭のエジプトに生きた三人の女性(フダー・シャアラーウィー、ナバウィーヤ・ムーサー、マラク・ヒフニー・ナースィフ)に関する研究に着手した。 2019年9月に共同研究者のMohammed Moussa氏を招聘し、二つの国際研究集会を開催、現代における宗教と政治思想について議論を深めた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成31/令和元年度は、三つの事例についての研究を進展させ、その成果を出版する機会に向けて順調に作業を進められている。また、共同研究者との議論の機会や、その結果としての研究の広がりも実感している。
|
Strategy for Future Research Activity |
令和二年度は、2020年9月に英国エクセター大学で開催予定の国際会議 Inscribing Knowledge and Power in Muslim Societies: A Diachronic Study と10月に東京大学で開催予定の国際会議 Knowledge on the Move: Connectivities, Frontiers, Translations in Asia において「近代主義者」に関する報告を行う予定である。エクセター大学での会議の成果は、ピアレビューを経て令和二年度内に書籍として刊行される予定である。 「異端者」については、共同研究者のMohammed Moussa氏との共編による書籍 Beyond Modernity: Critical Perspectives on Islam, Tradition and Power(Rowman & Littlefield International)の出版計画が進展しており、この中に令和元年度に行なった国際会議での報告成果を含むBeyond Boundaries: Nasr Hamid Abu Zayd and His Critical Thoughts on Islamを寄稿予定である。 「女性」については、山口みどり編『アジアの近代と新しい女性――憧れの感情史』に「エジプトの「新しい女性」――憧れの向こう側にあったもの」を寄稿予定であり、同書もピアレビューを経て令和二年度中の出版に向けて準備が行われている。 以上、今後は研究成果の発表を中心に研究課題に取り組んでいく予定である。
|
Causes of Carryover |
2月から3月にかけて海外調査を実施する予定であったが、新型コロナ問題により実施が困難となったため。次年度の後半に予定している海外調査において使用する計画を立てている。
|