2022 Fiscal Year Research-status Report
近現代イスラームにおける「排除」と知識人に関する研究
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18K18292
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Research Institution | Tokyo University of Foreign Studies |
Principal Investigator |
後藤 絵美 東京外国語大学, アジア・アフリカ言語文化研究所, 助教 (10633050)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | イスラーム / 現代 / 排除 / 知識 / 近代主義者 / 異端者 / 女性 / 復古主義者 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、近現代におけるイスラーム的知識の「統合」の中にあらわれる「排除」の現象に着目するものである。その際、とくに20世紀エジプトの事例から、イスラーム的知識の「統合」と「排除」の過程を辿り、その論理と権力構造を明らかにすることを目指す。 令和4年度は、前年度に引き続き「排除」の対象となった事例として「近代主義者」、「異端者」、「女性」に関する研究を進めた。 「近代主義者」については、法律家カースィム・アミーン(1863-1908)の著作の分析およびその著書の翻訳出版作業を行った。著作の分析としては、2月に上智大学で開催されたワークショップにおいて報告を行った。翻訳出版作業は令和4年度内に下訳を終え、現在校正の段階にある。 「異端者」については、1990年代半ばに、当時のエジプトで主流のイスラーム言説を批判する著述が問題視され、「異端者」の烙印を押されたナスル・ハーミド・アブー=ザイド(1943-2010)に関する研究を継続した。その成果は、6月にドイツのフンボルト大学ベルリンで行った報告に加えて、Mohammed Moussa氏との共編著による英語書籍に論文を掲載予定である。 「女性」については、20世紀初頭のエジプトでフェミニズム思想を発展させた二人のムスリム女性、マラク・ヒフニー・ナースィフ(1886-1918)とフダー・シャアラーウィー(1879-1947)の思想と経験に関する論考を完成させた。前者は、『アジア人物史』第10巻(集英社、2023年3月刊行)に所収の「アラブの近代とフェミニズムの開花」、後者は、近刊の山口みどり・中野嘉子編『アジアの近代と新しい女性――憧れの感情史』所収の「ヴェールを外すこと――憧れにうつるエジプトの近代」である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
令和4年度は、1)「近代主義者」についてはカースィム・アミーンに関して岡崎弘樹氏とのアミーンの著書翻訳および解説を収めた書籍の出版に向け作業を進め、2)異端者についてはナスル・ハーミド・アブーザイドに関してMohammed Moussa氏との共編よる書籍 Beyond Modernity: Critical Perspectives on Islam, Tradition and Power(Rowman & Littlefield International)の原稿として出版社に送付した。3)「女性」については、マラク・ヒフニー・ナースィフに関する論文を『アジア人物史』第10巻(集英社、2023年3月)の一部として刊行し、フダー・シャアラーウィーに関する論文も山口みどり編『アジアの近代と新しい女性――憧れの感情史』の一部として刊行に向けた準備を行っている。
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Strategy for Future Research Activity |
令和5年度は、研究成果を刊行すべく引き続き作業を行う。 1)カースィム・アミーンに関して岡崎弘樹氏とのアミーンの著書翻訳および解説を収めた書籍、2)ナスル・ハーミド・アブーザイドに関してMohammed Moussa氏との共編よる書籍 Beyond Modernity: Critical Perspectives on Islam, Tradition and Power(Rowman & Littlefield Internationalの出版、3)のフダー・シャアラーウィーに関する論文について、出版に向けた作業を行う。それぞれが刊行された後には、セミナーや研究会を開催予定である。
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Causes of Carryover |
本助成による成果の刊行が遅れたため。残額は令和5年度中と見込まれる1)カースィム・アミーンに関して岡崎弘樹氏とのアミーンの著書翻訳および解説を収めた書籍の出版、2)ナスル・ハーミド・アブーザイドに関してMohammed Moussa氏との共編よる書籍 Beyond Modernity: Critical Perspectives on Islam, Tradition and Power(Rowman & Littlefield Internationalの刊行に関連するセミナー等実施のために使用する予定である。
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