2021 Fiscal Year Research-status Report
家庭における外国人ケア労働者の利用と課題―フランスと日本の事例から
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18K18295
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Research Institution | Sophia University |
Principal Investigator |
牧 陽子 上智大学, 外国語学部, 准教授 (50802451)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 保育 / 介護 / 在宅ケア / 外国人ケア労働者 / 女性の就業 |
Outline of Annual Research Achievements |
2021年度は前年度に引き続き、コロナ禍の中でフィールド調査を行うのが困難であったため、これまでに収集したデータの処理(フランス語インタビューの文字起こし)と結果の分析、先行研究のさらなる調査に努めながら、原稿を一本執筆した。 論文集『フランスに学ぶジェンダー平等の推進と日本のこれから』(冨士谷あつ子・新川達郎編著 明石書店 2022年1月)において、「フランスにおける女性の就業とケアの外部化――在宅保育・介護を中心に」という章を執筆し、フランスのケア労働と女性の就業の関係について論じた。フランスというと施設での保育や介護が充実しているために女性が就業を続けられると日本では考えられがちだが、実際にはフランスの保育と介護は在宅でのケアが中心であること、そしてその在宅でのケアは、都市部では多くは移民女性により担われていることを明らかにした。 日本では保育や介護を他者に委ねると「冷たい」と単純化して考えられがちであるが、フランスでは子育てに関しては夫婦での時間、そして介護に関しては親との情緒的なつながりを大事にしており、フランスの研究では、例えば介護については世代間連帯はなくなっておらず、情緒的なものへと変化したと指摘されていることを説明した。
このほか、日本家族社会学会NFRJ量的調査研究会で分析中の考察「老親介護と子の意向」について、論文の投稿を試みているほか、同学会で行なっているもう一つの質的調査「家族に関する全国調査」と、家族についてのフィールドワーク研究のデータの分析を進めているところである。本科研調査の知見と合わせ、家族とケア、女性の就業のあり方について、考察を深めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
長引くコロナ禍の影響のため、フィールド調査は2018年秋と2019年春にフランスで集中して行って以来、日本、フランスともに進められずにいる。この2回の調査で集中的に行ったフランスのデータの文字起こしと分析作業を進め、2021年度には論文集に原稿を一本執筆したが、日本についての経験的データの収集と分析が未だできていない。
このほか、研究代表者が2019年度に2度、急性胆嚢炎のために入院するという不幸があり、この年度にはほとんど研究が進められなかったことも、進捗状況に影響している。
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Strategy for Future Research Activity |
日本の特区事業(東京都、横浜市)での外国人家政婦や、利用家庭へのインタビュー調査と参与観察を当初は予定していた。新型コロナウイルスの国内での感染状況をみて、可能であれば実施したい。 また、これまでに集めたデータと分析結果をまとめ、論文として投稿することを検討している。2022年1月に出版した論文集で論じた点のみならず、本研究・調査によりこれまでにさまざまな知見が得られている。どのテーマについてどの学術雑誌に投稿するかを目下、検討中である。
このほか、さらに先の展望になるが、勤務校において2023年度にサバティカル休暇を取得できる見込みである。本研究でこれまでに得られた知見と併せて、さらなる調査の進展を目指すほか、2023年度に集中的に原稿や論文の執筆を行う予定である。
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Causes of Carryover |
2021年度も引き続き、コロナウイルスによる影響でフィールド調査が行えず、経費の主要な柱である旅費を支出しなかったため。これまでに収集したデータの処理(インタビューの文字起こし)と、先行研究の文献の購入が主な支出先となった。
2022年度も引き続きデータの処理(インタビューの文字起こし)や文献の購入に支出するほか、可能であれば日本で外国人家政婦と利用家庭に調査を行うため、その旅費に充てる予定である。
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