2021 Fiscal Year Research-status Report
The dynamics of gender structure in rural areas through overlapping networks between women and men
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18K18299
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Research Institution | Kinjo Gakuin University |
Principal Investigator |
畠山 正人 金城学院大学, 国際情報学部, 准教授 (50635240)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | ジェンダー / 農村女性 / 男女共同参画 / 中山間地域 / 過疎地域 / 過疎問題 |
Outline of Annual Research Achievements |
農山村におけるジェンダー研究と過疎研究とを俯瞰し、その相互作用のありようを整序し、既存の過疎研究の論点を提示していった。 具体的には、第一に、農山村研究から発せられ続けてきた既存の過疎研究に関し、ジェンダーの視点が欠けていることを析出していった。既に前年度研究までの研究で示してきたように、農山村の住民は、男性に充てがわれたジェンダー役割(例えば生家の家産の維持、実父母の要請、および地元愛を基盤とした精神性など)、および女性に充てがわれた役割(例えば実子の教育、家事、それに加えて生家においても実父母の介護義務を担うなど)に疲弊している様相が明るみとなっている。そしてその中で、これらのジェンダー役割に苦悩を抱く住民が他出の可能性を示す傾向も明らかにしていった。すなわち現代の過疎問題においては「ジェンダー」の視点がより重要になっていることが示唆されている一方で、既存の過疎研究においてはその視点が等閑視されている状況を論点提示している。 第二に、既存の農村女性研究が、実際の過疎問題に対してどのような政策インパクトを与えてきたのかを精査した。戦後から続く既存の農村女性研究が、その時代時代の女性の悩みに寄り添うものであったのに反し、政策アピール(例えば農村振興、移住定住対策など)の場面においては、その「煌びやかな部分」(例えば活躍する女性像、起業する女性など)だけが照射される傾向を指摘している。 ゆえに、過疎問題と農村女性研究とを真に結びつけるためには、女性研究のみならず農村部における男女の強い非対称性そのものに焦点を当てること、そして、(特異な女性のケースだけではなく)よりミクロな場面での男女の非対称性の変容過程を読み解くことを必須とすることを、強調していった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究の課題について明らかにしていくためには、まずは当事者となる住民男女ともがどのような生活状況にあり、その中でどのようなジェンダー役割を要請され、かつそれにどのような対処(ないしは対峙)しているかを浮かび上がらせる必要があった。だが、新型コロナウイルス感染症が今年度さらに伝搬したため、現地におけるインタビュー調査が停滞した。そのため、進捗は「やや遅れている。」とした。 特に農山村地域は高齢者が多いため、感染症の伝搬には非常に敏感であり、ゆえに直接的な接触は差し控えているのが現状であった。その結果、2021年度に複数回を予定していた現地訪問がほぼ叶っていない。ゆえに2021年度は主に文献調査、ならびに、これまでの申請者自身の調査データを整序しつつ、ジェンダー変容に関わる分析枠組、ならびに農山村におけるジェンダー変容の様相を析出していった。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究は実地調査を必要とするため、今後は新型コロナウイルス感染症の状況を配慮しつつ、以下のように対処する。 第一に、感染症対策に熟慮した実地インタビュー調査を実施する。具体的には、人流が少なく過去に感染症の波が少なかった時期に集中して実地調査を行う。またビデオ会議形式でのインタビュー調査の可能性を検討し、実施することとする。 第二に、実地で得た質的データから発見的見地を得るために、構造化理論を参照したジェンダー研究への理解を深め、その援用可能性を探っていく。具体的には、本研究は特に「男女が織り成す行為によって作られる既存のジェンダーへの批判や自省」を析出することが重要であるため、それを可視化させるための分析枠組を確立していく。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルス感染症防止対策のため、旅費とその他費用(主にレンタカー代)に次年度使用額が生じた。現地調査が困難になった今年度の間、既存データを解釈、分析するために必要な文献を収集するため、物品費を要した。 今後の使用計画として、まずは過去年度に叶わなかった実地調査を行うために必要な旅費を使用する。そのことにより、不足していた質的データを得るとともに、その分析、解釈を進めていく。 またその他費用に関しては、調査・研究結果の社会への公開、還元を行っていく。具体的には、学会での報告、学術誌の掲載、報告書の作成に関する諸費用として使用していく予定である。
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Research Products
(2 results)