2022 Fiscal Year Research-status Report
The dynamics of gender structure in rural areas through overlapping networks between women and men
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18K18299
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Research Institution | Kinjo Gakuin University |
Principal Investigator |
畠山 正人 金城学院大学, 国際情報学部, 教授 (50635240)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | ジェンダー / 男女共同参画 / 中山間地域 / 農山村 / 過疎 |
Outline of Annual Research Achievements |
農山村における過疎研究をジェンダーの視点から再構成、再検討することで、過疎化が進行する農山村におけるジェンダー変動の可能性を検討している。 2022年度は、それまでの間に行っていたパイロット的なインタビュー調査を継続した。調査は愛知県奥三河地方において、比較的生活条件の異なるエリア(DIDの相対的に高い旧市街地と相対的に低い山間地)ごとに、生活状況における女性役割と男性役割の状況を調べている。 調査をふまえた現状での傾向として、第一に、ジェンダー関係が多様化、複雑化、さらには変化の流れにあるとする一連のジェンダー研究をふまえた考察が挙げられる。農山村においても女性、男性とも一様ではなく、ライフヒストリーや家族関係、地域との関係等に応じてジェンダー役割に差異があること、変化が生じていることが、これに当たる。一例として、従来は固定的なジェンダー役割の中で過負荷を負う傾向にあった若年層女性(婚姻期間が比較的短く、かつ嫁入婚の女性)については近年では稀少となり、その代替を他出した女性、男性、外国からの嫁入婚女性など多様な主体が担いつつあることが、調査地における傾向であった。第二に、インターセクショナリティの一連の研究をふまえ、農山村における過疎とジェンダーとの共振性について検討していった。エリアの異なるインフォーマント間の比較検討によると、農山村においてはむしろDIDの相対的に高い旧市街地において、固定的なジェンダー関係とそれによる女性への(時間的・経済的・身体的)コストが高い傾向が見出された。これら旧市街地においては都市部へのアクセスが容易なことから、買い物、家族の送迎に加えて、生家の家族介護等などのより多様な役割を女性が一手に担う傾向があった。また彼女たちにおいては、当該の女性だけではなく家族ぐるみでの他出の意志が強いパターンも存在した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究の課題について明らかにしていくためには、まずは当事者となる農山村の男女の生活状況に関する調査の中から、どのようなジェンダー関係が析出可能かを検討する必要があった。だが、2022年度においても新型コロナウイルス感染症の影響が残り、現地におけるインタビュー調査が停滞した。また2022年度当初において計画したオンライン会議形式でのインタビューも調査地のインフラ上困難であった。そのため、進捗は「やや遅れている。」とした。 特に農山村地域は高齢者が多いため、感染症の伝搬には非常に敏感であり、ゆえに直接的な接触は差し控えているのが現状であった。その結果、2022年度は限られたインフォーマントに対するパイロット調査を中心にし、調査設計およびれそれら調査データを整序をおこなった。
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Strategy for Future Research Activity |
新型コロナウイルス感染症対策に熟慮した実地インタビュー調査を実施する。新型コロナウイルス感染症に対する対策および市民の健康管理意識は変わりつつあるものの、調査地における意識は(高齢者の多さなどの理由から)いまだに高いことから、インフォーマントへの配慮のため人流が少なく感染症の波が少ない時期に集中して実地調査を行う。 2023年度前半においては、 2022年度までの間に行ったパイロット調査で既に得た質的データからの発見的見地により、設問内容やそれをふまえたモデルなどの構造化作業を行い、追加的調査によりモデルの援用可能性の検討と修正を行っていく。2023年度後半においては、学会発表、論文公表、報告書作成等によりそれらを広く社会に発信していく。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルス感染症対策のため、旅費とその他費用(主にレンタカー代)に次年度使用額が生じた。現地調査が困難になった2022年度の間、既存デー タを解釈、分析するために必要な文献を収集するため、物品費を要した。 今後の使用計画として、2022年度には叶わなかった地区・インフォーマントへのインタビュー調査を行うために必要な旅費を使用する。そのことにより、不足していた質的データを得るとともに、その分析、解釈を進めていく。またその他費用に関しては、調査・研究結果の社会への公開、還元を行っていく。具体的には、学会での報告、学術誌の掲載、報告書の作成に関する諸費用と して使用していく予定である。
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