2020 Fiscal Year Research-status Report
The impact of globalization and digitalization on gender equality in Germany
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18K18301
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Research Institution | National Women's Education Center |
Principal Investigator |
佐野 敦子 独立行政法人国立女性教育会館, 研究国際室, 専門職員 (00791021)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | ドイツ / デジタル化 / ジェンダー / インダストリ4.0 / デジタル暴力 / グローバル化 / デジタルトランスフォーメーション / 女性運動 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、これまでドイツをフィールドに研究を行ってきた申請者の知見をもとに、ここ数年で大きく前進したドイツのジェンダー平等推進策を、1)国際的影響と基本方針、2)各施策と基本方針との関連、3)課題解決としてのICTへの期待、という3つの柱から体系的に見つめ直す。そのうえで、第4次産業革命(Industrie4.0)を背景に急速に進むドイツのデジタル化とICT活用の状況をふまえ、ICTがジェンダー平等推進にいかなるインパクトをもちうるか考察する。あわせて、研究期間内に退任が予想されるメルケル首相が、EUを牽引する政権期間中に推進したジェンダー政策を俯瞰し、「グローバル化」に対峙する国家がジェンダー平等推進にどのように関わり、課題に真摯に取り組まなければならない理由も明確にすることを狙う。 研究期間初年度である平成30年度は、ドイツのワークショップでの発表、インタビュー、および文献・資料収集をとおして、ドイツの現状把握につとめた。2年目から3年目にはかけては国内外での学会発表を重ね、いくつかの論文にまとめている。
これまで得られた主な知見としては、①1)と2)で言及した基本政策(主には第二次男女平等レポートGleichstellungbericht)が、ドイツのフェミニストや施策に大きく影響を与えていること、②メルケル政権がフェミニズムを重視している背景にEUの方針やW20などグローバル化の影響が見え隠れしていることがあげられる。以降もドイツの動向を追いつつ、3)のICT化が具体的にどのような影響を及ぼしているか、追究をすすめる。
可能な限り、今後はコロナ禍の影響と日独比較も視野にいれる。人々の交流の場がオンラインに急速に移行し、ジェンダーに配慮したリモートワークやSNSの活用を巡って多様な議論が噴出しており、この動向も抑える必要がある。及び、この状況は日本も同様であるためである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
コロナ禍のため、平成2年度以降に予定していた滞在研究の見通しがたたないため。
状況が落ち着くまで、①これまでの調査・研究の整理、および論文作成、②インターネットを活用した現地の最新情報の収集、③比較対象としての日本の状況の考察、の3点を中心に研究を進める。
状況を見据えて、ドイツ調査、および現地の識者等の知見や実例をふまえた研究の再開を企図する。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの調査・研究から、デジタル化が予想以上にドイツ社会全体にインパクトを与え、ジェンダー平等推進の議論や女性運動にも影響を及ぼしているのがみえている。研究計画初期に仮に設定した4つのカテゴリーのうち、3)労働、4)人材育成(教育)についてはとくに見識が深まっている。1)法律については、ジェンダー法学会での発表を機に、ドイツにおけるジェンダー関連法のこれまでの経緯を整理した。加えて、サイバーハラスメントやオンライン上の暴力(デジタル暴力)を巡ってのEUやドイツの規制や法整備を巡る最新動向を把握し、さらに追究していく。 残った2)ICTを活用した女性のエンパワーメントについては、ここまでの調査研究でいくつか事例を収集しているが、コロナ禍の影響で、現在はインターネットを通じた情報収集で補完している。だが、専門委員会からデジタル経済におけるジェンダー平等の提言が新たに出ており、今後は先進事例や取り組みが新たに見出されるような可能性も高い。見通しがつき次第、現地調査でフォローする予定である。
Covid-19によりドイツのジェンダー平等を求める動きにも大きな変化がある。各国の女性政治家の手腕に注目が集まっていることから、基本法(憲法)に記載があるポジティブアクションの適用によってパリテ(議員の女性割合の向上)を要求する動きが強まっている。加えて、介護職の賃金改善要求も活発化している。Covid-19によって後押しされたデジタル化が、このようなジェンダー平等推進全体に対してどのような役割を担うかも注目したい。最終的にはドイツを事例に「ICT化」もしくは背景の「デジタル変容」「グローバル化」が、ジェンダー平等と女性運動に与える影響の体系化を試みる。
令和3年度からは東京大学でAI社会におけるマイノリティの権利保障を追究することになった。日本の状況も視野に入れ、さらに研究を進める予定である。
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Causes of Carryover |
コロナ禍によってドイツでの現地調査や地方での学会発表ができなかったため、旅費が発生しなかった。状況の改善をまって次年度以降に実施する予定である。
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