2018 Fiscal Year Research-status Report
確率論的な過程の分離可能な軟X線MCD顕微鏡の高時間分解能計測技術の確立
Project/Area Number |
18K18311
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Research Institution | Japan Synchrotron Radiation Research Institute |
Principal Investigator |
豊木 研太郎 公益財団法人高輝度光科学研究センター, 利用研究促進部門, 博士研究員 (90780007)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | ポンププローブ法 / X線磁気円二色性 / 磁化家庭 |
Outline of Annual Research Achievements |
強磁性体における磁化反転はナノ秒オーダーの高速現象である。このダイナミクスを可視化する方法として、磁場印加をポンプとしたポンプ-プローブ法があるが、従来法では磁場印加毎に逆磁区の核生成や磁壁移動が常に単一の素過程で再現的に起こることを前提としている。しかし、熱活性化を起源とした確率論的ゆらぎにより、現実の磁化反転では複数通りの素過程が存在すると予測される。これは従来のポンプ-プローブ法では観測できず、その解決が長年の課題となっていた。そこで本研究では、新たにField Programmable Logic Gate (FPGA)を用い、プローブ光であるパルスX線の波高解析をパルス毎に行い、波高の確率分布を解析することで、磁化反転ダイナミクスを素過程ごとに可視化する新規手法の開発を目的としている。 2018年度は、ポンプに対応するパルス磁場印加機構の検討およびデータ収録系の検討を行った。ポンプ磁場の印加機構としては、電圧誘起磁気異方性変調、電気磁気効果およびマイクロコイルの3種に関して行った。その結果、当初の計画通りマイクロコイルを使用することが適切であることがわかった。印加磁場としては50 μm程度の直径のマイクロコイルにおいて、おおよそ1 mT程度のオーダーの磁場が得られると予想される。したがって、保磁力が最低でも1 mT程度となる試料を試験測定のため用意する必要があることがわかった。また、データ収録機構に関しては、単パルスの信号強度と繰り返し周波数とを考慮し、時間当たり信号雑音比の関係の検討を行った。結果として、当初の予定とは異なり、繰り返し周波数の高速化よりも、単パルスの信号強度の向上が有効であることがわかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究で開発する手法では、従来法の信号雑音比は積算時間の二乗根に比例する関係式が成り立たない。これに関して詳細に検討を行った結果、当初の予定と異なり繰り返し周波数の高速化よりも単パルスの信号雑音比の向上が有効であることがわかった。このため、測定の周波数帯域に変更が出たためデータ収録系の再検討を行った。また、試料へのポンプ機構に関しても、当初の予定に比べ効率的な手法が限られていることがわかったため、若干の再検討を行う必要が生じた。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の予定では、42 MHzのデータ収録が必要であったが、208 kHzの遅いデータ収録とし、代わりに信号雑音比を向上させる。また、Ni/Co人工格子膜とマイクロコイルからなる、測定試料を作製し、非集光ビームを用いた試験を行う。これらを2019年前期に実施する。後期は前期に行った実験結果をフィードバックしながら集光ビームを用いた顕微・時分割測定を行う。
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Causes of Carryover |
2018年度作製予定であった、FPGAを用いたデータ収録系を完成させる。また、試料ホルダの作製も行う。その他経費として、出張旅費(成果発表およびSpring-8での実験)およびSpring-8のビームタイムの消耗品実費負担費としても用いる。
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Research Products
(1 results)