2019 Fiscal Year Research-status Report
「生活表現」としての農畜産業の景観価値解明と持続可能性
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18K18316
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Research Institution | Sapporo City University |
Principal Investigator |
大島 卓 札幌市立大学, デザイン学部, 講師 (20766331)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 農畜産業景観 / ランドスケープデザイン / 観光事業 / 生活表現 / 近代化産業遺産 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、明治期以降日本に導入された西洋農法を基盤とし、現在も経営が続いている歴史的農畜産業施設群を研究対象として、地域再生に取組むための前提条件となる景観価値を明らかにしていく事を目的としている。そのため主として、以下の実地調査および文献蒐集調査を実施した。 (1)千葉県三里塚御料牧場記念館での実地調査およびヒアリング調査の実施:日本における西洋式官営牧場の先駆的事例である下総御料牧場に関する展示資料内容の確認および記念館職員へのヒアリングを実施している。 (2)北海道町村農場での実地調査およびヒアリング調査の実施:歴史的変遷や社会背景(農場の歴史、地勢・立地特性、生業・生産技術)の整理、空間・施設の構成要因(サイトプラン、建造物、生産器具類、周辺環境との関係)の把握、運営実態の整理(運営組織、運営事業・手法、年間計画、広報計画など)を実施している。 (3)岩手県小岩井農場でのヒアリングおよび文献調査の実施:小岩井農場の成り立ち、歴史的経緯、現在の企業運営、国指定重要文化財に指定された生産施設群の現状などについて、農場内資料館館長野沢裕美氏にヒアリング調査を実施している。また小岩井農場所管の耕作面積図・絵地図・風景写真・文献資料等について、資料の全体数、種類、名称、年代、記載内容などについて確認を進めていき、撮影調査を実施している。 (4)文献蒐集調査の実施:宮内庁書陵部および国立国会図書館等にて、「御料牧場」など歴史的農畜産業施設に関する文献資料、特定歴史公文書を閲覧し、写真撮影を実施している。 また研究成果の一部を、学内論文集『札幌市立大学研究論文集』に寄稿した。①「北海道七重官園における明治初期農畜産業施設の土地利用の特徴」:札幌市立大学研究論文集 第14巻 第1号(2020):札幌市立大学,13-22
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
現在までの進捗状況として、研究計画書に記載した調査候補地(明治期以降日本に導入された西洋農法を基盤とし、現在も経営が続いている歴史的農畜産業施設群を対象として、(1)歴史的価値が明らかにされている事例(町村農場:北海道江別市、小岩井農場:岩手県雫石町)、(2)民間資本への払下げによって現在も経営が続いている事例(岩瀬牧場:福島県鏡石町、千本松牧場:栃木県那須塩原市、山縣農場:栃木県矢板市)、(3)明治時代に民間資本によって開設され、現在に至る事例(神津牧場:群馬県下仁田町)、(4)その他の事例(宮内庁御料牧場:栃木県高根沢町))のうち、 実地調査およびヒアリング調査を実施したのは、①北海道町村農場(2018年度から2019年度にかけて実施)、②福島県岩瀬牧場(主に2018年度実施)、③奈良県植村牧場、④七飯町歴史館:北海道七重官園(両施設とも研究計画書提出時には把握していなかった類似事例:主に2018年度実施)、⑤千葉県三里塚御料牧場記念館:下総御料牧場、⑥岩手県小岩井農場(2019年度実施)、となっている。 また、地域・観光資源の基礎となる農畜産業の歴史的経緯や文化的背景を把握するため、文献史料蒐集調査を実施したのは、①群馬県神津牧場(東京都立中央図書館所蔵文献より2019年度実施)、②岩手県小岩井農場(農場内資料館および国立国会図書館所蔵の文献・絵地図資料より2018年度から2019年度にかけて実施)、③下総御料牧場(宮内庁書陵部および国立国会図書館所蔵の文献資料、特定歴史公文書より2019年度実施)となっており、引き続き生産構造や産業形態の変遷等について読解し分析を進めている。 以上の点から2019年度の研究については、おおむね順調に進展していると判断する。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究の推進方策として、以下の3点を挙げる。 (1)農畜産業施設の景観価値の解明(継続):2年目(2019年)から継続して、明治期以降日本に導入された西洋農法を基盤とし、現在も経営が続いている歴史的農畜産業施設群を対象とした実地・ヒアリング調査を実施、各施設の景観的特徴を明らかにしていく。 (2)文献調査の実施(継続):地域・観光資源の基礎となる農畜産業の歴史的経緯や文化的背景を把握するため文献史料を蒐集し、生産構造や産業形態の変遷等について読解し分析していく。 (3)「生活表現」としての農畜産業景観の構造分析:実地・ヒアリング・文献調査で得られた知見(歴史的変遷や社会背景(各農畜産業施設の歴史、地勢・立地特性、生業・生産技術、社会背景)の整理、空間・施設の構成要因(サイトプラン、建造物、生産器具類、周辺環境との関係)の把握、運営実態の整理(運営組織、運営事業・手法、年間計画、広報計画など))に基づき、農畜産業の景観・生産構造に見られる地域文化:「生活表現」としての視覚的投影を考察し、地域・空間毎の特徴について考察していく。
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Causes of Carryover |
2019年度末(2020年3月)に予定していた実地調査(岩手県小岩井農場)が新型コロナウィルスの感染拡大にともない延期となったため、現地調査・活動旅費として計上していた金額に余りが生じた。 以上の次年度使用金額と合わせて2020年度の研究費執行にあたっては、設備備品・消耗品費として、農畜産業・農村計画・産業観光関係の専門図書購入および印刷用消耗品購入を予定している。また旅費については、アクティビティを高め現地でのコミュニケーションを円滑に行う必要性から2019年度から引き続き相当額を計上し、人件費については調査・分析データの入力補助・図表作成補助員の雇用費用を予定している。
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