2019 Fiscal Year Research-status Report
考古学データの統合研究環境の構築:文化伝達プロセスの推定とデータベース構築
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18K18325
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
田村 光平 東北大学, 学際科学フロンティア研究所, 助教 (60725274)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 文化進化 / 考古学 / 弥生時代 / データベース / 土器 / 幾何学的形態測定学 / 数理モデル |
Outline of Annual Research Achievements |
弥生時代の西日本全域にみられる遠賀川式土器と、それに先行する突帯文土器の形態を、幾何学的形態測定学の一手法である楕円フーリエ解析をもちいて定量化することで、土器の形態変異を定量化・可視化している。同時に、文化の融合を扱う数理モデルを構築し、文化伝達のあり方が、形態変異の時間変化にどのように影響するのかを検討している。さらに、ブラウザ上で解析対象を選択するだけで上記の分析が行えるデータベースの構築もおこなっている。 さらに本年度は、遠賀川土器を所蔵する博物館を訪問し、資料の実見も開始した。3次元スキャナによる計測もおこなっており、発掘報告書の二次元画像からは得られないデータの取得にも努めている。こうしたデータは、3次元の考古遺物を二次元に射影する際の方法論的妥当性を検討するためにも使用可能である。 また、国内外の学会・研究会で、考古遺物の幾何学的形態測定学に関する発表をおこなった。とくに、 9月に、報告者が事務局次長を務めて開催したMORPH2019 Sendaiは、人類学・考古学分野の幾何学的形態測定学の学会であり、アジアでの開催は初めてである。これを日本で開催できたことで、幾何学的形態測定学の普及に大きな貢献ができたと考える。 本研究の成果も含めて、森北出版から『文化進化の数理』を出版した。本書は、本研究課題の核となる文化進化のコンセプトと数理モデル、データ解析手法について幅広く取り扱っており、日本における文化進化研究やその他文化の定量的研究の普及に大きく貢献できると期待される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
書籍の執筆と幾何学的形態測定学に関する国際学会の運営に時間をとられ、数理モデルの論文投稿ができなかったのはマイナス部分である。その一方で、刊行した書籍は、本研究課題の目的のひとつである「考古学における定量的解析の普及」に大きく貢献すると期待される。遠賀川土器のデータ収集は、その分布の限界である東海地方まで集められる見通しがたった。また、各地の博物館を訪問して土器を実見するとともに、データを収集できているのは大きな進展である。
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Strategy for Future Research Activity |
COVID-19のため、資料の実見は難しい。そのため、現在利用可能なデータを使って、研究成果のまとめに注力する。
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Causes of Carryover |
成果をまとめた書籍の刊行が当初の予定より少し遅れ2020年の4月になったため、献本用の予算を繰り越した。
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Research Products
(6 results)