2021 Fiscal Year Research-status Report
漢籍利用者の研究行動の解明と利用者タスクに基づく目録作成・評価枠組みの開発
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18K18329
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Research Institution | Japan Women's University |
Principal Investigator |
木村 麻衣子 日本女子大学, 文学部, 准教授 (30814024)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 利用者タスク / 漢籍 / 書誌データ / ユースケース / アクティビティ図 / 概念モデル |
Outline of Annual Research Achievements |
2021年度は,漢籍研究者の研究行動を理解するためのインタビュー調査を1件実施した。この調査は,2020年度までに実施したインタビュー調査結果を確認するための調査という位置づけである。この1件を含め,これまでに実施した15名の研究者に対するインタビュー調査で,漢籍を利用する研究者の研究分野をある程度網羅し,研究行動を把握することができたと判断した。これまでの調査結果をもとに,漢籍利用者の研究行動を可視化する手法について検討し,最終的に,ユースケースおよび研究プロセスを示すアクティビティ図を用いて,研究行動を適切に表現できると考えた。そこで,2件の確認のための調査を除く13件のインタビュー調査結果をユースケースにまとめた上で,アクティビティ図を描き,漢籍利用者の研究行動に関する原著論文1本を発表した。 ユースケースは,研究者の研究行動を行為ごとにまとめたものであり,ユースケース名は,そのまま利用者タスクと考えることができる。一方で,ユースケースはインタビュー結果をまとめたものであるので,インタビュー調査自体から利用者タスクを抽出する手法を別途考案し,ユースケースから抽出した場合と結果を比較することにした。13件の調査結果に対して,インタビュー調査結果からの利用者タスク抽出を実施した。さらに,上記の2通りの方法で,利用者タスクに対応するデータ要素(エレメント)の抽出も実施した。また,一般的な目録データにおいて,IFLA LRMに示される概念モデルが,漢籍にも適用されうるかどうかを検討した。 現在は,抽出した利用者タスクとエレメントについての論文を執筆中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初の研究計画にあった,A)インタビュー調査の実施(※ただし,新型コロナウイルス感染拡大のため主に国内の研究者を対象とすることに変更した),B)インタビュー調査結果の質的分析と,利用者タスクの抽出,C)漢籍の目録に記録されうるデータ要素(エレメント)の抽出,D)利用者タスクとエレメントの対応付けが完了しており,成果を報告するための論文を執筆中である。当初の研究計画の中に,漢籍利用者の行動を可視化するための方法の検討と実行は含まれていなかったが,当初研究目的の1)特定の資料群,具体的には漢籍の研究者を対象としたインタビュー調査と質的分析により,漢籍利用者の研究行動を明らかにすること,を達成するためには必要な手順であり,これらも実施済みである。一方,E)複数の図書館や専門機関による実際の漢籍の書誌データと,本研究成果である利用者タスクとエレメントの対応表を対称し,対応表の評価枠組みとしての有効性を検証する。については未達成である。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の研究目的の1)と2)は成果報告を除き,達成済であるので,引き続き論文執筆を進めるとともに,研究目的の3)図書館のコンピュータ目録や,デジタルアーカイブにおける漢籍の書誌データに必要なデータ要素を,利用者タスクと対応づけて明らかにし,同時に利用者タスクを用いて,既存の書誌データを評価する枠組みを開発すること,を達成すべく研究を行う。具体的には,複数のデータベースから漢籍書誌データを収集し,書誌データに記録されているエレメントを抽出して,インタビュー調査の分析から得られた利用者タスクとエレメントの対応表と照らし合わせる。対応表内のエレメントが書誌データ中に存在すれば,対応表内の利用者タスクを満たすことができると考えられる。現実の書誌データと対応表とは,異なる概念モデルのもとに作成されている。この点に留意しつつ,対照作業を進める必要がある。
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Causes of Carryover |
引き続き新型コロナウイルス感染拡大により,海外でのインタビュー調査を見合わせざるを得ない状況であったため,旅費の支出がなかった。一方で,研究代表者の所属機関変更および遠隔授業対応などが影響し,今年度までの研究計画の遂行はやや遅れ気味であるため,今年度も引き続き研究を続行することとした。次年度使用額については,国内学会での研究発表旅費,関連文献の購読費,消耗品の購入費,英語での論文投稿のための英文校閲費に使用する。
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