2020 Fiscal Year Research-status Report
分野横断的な論文生産性指標の高精度化のための手法開発:国内研究者を対象に
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18K18333
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Research Institution | Kyushu Institute of Technology |
Principal Investigator |
山本 鉱 九州工業大学, インスティテューショナル・リサーチ室, 准教授(専門職) (00608903)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 正規化論文数 / 分野間補正 / 平均論文生産性 / 必要最低サンプルサイズ |
Outline of Annual Research Achievements |
論文数は研究の活動度を測る上で重要な指標であるにも拘わらず,被引用数に見られるような,研究分野を超えた比較を可能とする指標が存在していない.そこで,論文数の正規化指標(正規化論文数)を独自に開発した.正規化前後の比較により,論文が発表されにくい分野の論文数を相対的に増やすという正規化の効果を検証できたものの,全ての分野において平均論文生産性を求めるための標本数が不足しており,正規化論文数の信頼性を評価できなかった. 2020年度は引き続き,標本数を増やすことを目的に,①国内の研究機関に協力を依頼するかたちでの著者IDリストの収集と,②インターネット上に公開されている著者IDリストの収集を行った.また,2020年度からは新たに,③インターネット上に公開されている教員情報を基に,独自にScopusの著者IDを特定することを試みた.①については,2019年度時点で11大学から協力が得られていたが,2020年度はさらに1大学から協力が得られることになった.②については,2019年度時点でエルゼビア社の研究者プロファイリングツール(Pure)を活用している大学のうち,5大学の著者IDリストを収集していたが,2020年度は新たに,4大学の著者IDリストを収集することができた.③については,教員情報が在職者かつ正規雇用者のみを含むよう整理された状態でインターネット上に公開されており,学校基本調査で公表されている教員数と類似している大学に限定したため,4大学の著者IDリストの収集にとどまった.これらの結果,九州工業大学を含め,合計26大学,約20,000人の著者IDへとデータセットを拡張することができた.THE 世界大学ランキングで見ると,上位100位以内に位置する大学から,1001+位に位置する大学までを幅広く含んでいることから,標本集団に偏りがなくなりつつあると考えている.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2020年度においても,研究の根幹となる著者IDリストの収集を主目的とした.2019年度までに約15,000人の著者IDを収集しており,2020年度はさらに5,000人近い教員の著者IDを新たに収集した.データが増えたことで,全ての分野において必要最低サンプルサイズを求めることが可能になり,その結果,分野によってはこれまで推定していた300ではなく,600以上のサンプルサイズが必要となることが明らかとなった.2020年度の著者IDリストを基に,直近10年間を対象とすることで全ての分野において600以上のサンプルサイズを確保できたものの,複数の協力大学から,在職年数の少ない若手教員を含めたときには対象期間が短い方が望ましい,あるいは,それ以外の教員においても直近の研究力の把握が重要であるとの指摘があった.そのため,さらなるサンプルサイズの確保し,対象期間を短くする必要がある. 他大学からのデータ協力を得るためには,実際に訪問して執行部やIR担当者に本研究の目的や内容を直に説明することが肝要である.複数の総合大学に対して打診を計画していたが,新型コロナウィルス感染症の感染拡大により活動が制限され,2020年度は1大学にとどまった.サンプルサイズを増やす必要性の判明に加え,新たなデータ収集方法の検討が必要となったことから,当初予定していた,国内の平均論文生産性を求めるための層別サンプリング手法について十分な検討を行うことができなかった.
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Strategy for Future Research Activity |
2021年度においても引き続き国内の幅広い大学を対象に協力を打診していきたいと考えているものの,新型コロナウィルス感染症の感染拡大により見通しが立たない状況にある.そこで2020年度から試行的に開始した,インターネット上に公開されている教員情報の活用を主軸としてデータ収集を進めたいと考えている.ただし,Scopus著者IDを特定するためには教員名だけでなく,その教員の過去の研究業績や所属先情報などの参考情報が必要となる.また,大規模な大学はアルファベットでの同姓同名が多数存在することから,著者IDの特定がさらに困難になる.情報収集や著者IDの特定に要する労力を考えると,データの大幅な増加は見込めない.そのため,これまでのような大学単位での収集ではなく,サンプルサイズが特に不足している分野に限定して,効率的に収集することも検討する必要がある. 同時並行して,国内の平均論文生産性を求めるための層別サンプリング手法について検討する.研究者を層別するための変数として,所属機関の研究レベルを想定している.具体的にTHEやQSなどの世界あるいは日本版の大学ランキング,ScopusやSciValから得られる各大学の論文数や被引用数などが考えられる.層別したデータから国内研究者の分布に応じてランダムにサンプリングを行い,平均論文生産性を求めた後,層別サンプリングを行わず全データを用いたときの平均論文生産性と比較し,手法の妥当性を検討する.
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Causes of Carryover |
新型コロナウィルス感染症の感染拡大により予定していた出張(他大学訪問,国際会議での発表)が全て取りやめとなったため.
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