2021 Fiscal Year Research-status Report
分野横断的な論文生産性指標の高精度化のための手法開発:国内研究者を対象に
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18K18333
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Research Institution | Kyushu Institute of Technology |
Principal Investigator |
山本 鉱 九州工業大学, 企画部企画課, 准教授(専門職) (00608903)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 正規化論文数 / 分野間補正 / 平均論文生産性 / 必要最低サンプルサイズ / 層化抽出 |
Outline of Annual Research Achievements |
論文数には被引用数に見られるような,研究分野を超えた比較を可能とする指標が存在していないため,正規化指標(正規化論文数)を開発した.具体的には,分野毎に投入された労力を考慮した平均論文生産性を求め,その値で論文数を正規化する.この際,Scopusに収録されている論文情報を,個人単位で精度よく名寄せしている.正規化前後の比較により,論文が発表されにくい分野の論文数を相対的に増やすという正規化の効果を検証できたが,平均論文生産性を求めるためのサンプルサイズが不足しており,正規化論文数の信頼性を評価できなかった. 信頼性を高めるためには,サンプルサイズが有限であることによって生じる偶然誤差と,不適切なサンプリングによって生じる系統誤差をできる限り抑える必要がある.昨年度までの研究で各分野においてサンプルサイズが600未満の場合は平均論文生産性の信頼性が低いことが分かった.今年度は系統誤差をできる限り抑えるためのサンプリング方法を検討した.本研究では論文生産性における系統誤差が,大学間で研究活動度のレベルに差があること,そしてデータが実際と異なる密度分布で収集されていることに起因すると考えた.系統誤差を最小化するためには,大学をそのレベルに応じてグループに分けしたうえで層化抽出を行う必要がある.本研究では先行研究で用いられている国内の論文シェアに基づく大学ランキングを活用して大学をグループ化し,各グループのサイズ(教員比率)を決めることにした.先行研究ではArticleとReviewしか活用していないため,Conference Paperのデータを分析から除外すると,昨年度時点のデータベースではサンプルサイズが600未満の分野が存在することが分かった.そこで,その分野のサンプルサイズを増やすことを目的に,他大学との連携を構築したり,公開情報の活用範囲を広めたりとデータ収集に努めた.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度のデータ収集により,国内33大学に所属する23,744名の正規教育職員(教員)の著者IDリストを作成することができた.この著者IDリストを基にした,直近10年間のArticle,Reviewの総数は341,112本であった.サンプルサイズを確認すると,一番小さい分野でも713であり,偶然誤差を最小化するために必要なサンプルサイズを満たしていることが分かった. また,系統誤差を最小化するためのサンプリング方法も確定している.データセットが完成したのは3月上旬であり,詳細な分析を行うために研究期間を延長したが,手法とデータが揃ったことから,おおむね順調に進展していると考える.
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Strategy for Future Research Activity |
系統誤差を評価するために,まず,本研究で集めた国内33大学の教員を国内論文シェアに基づく4つのグループに分類し,グループ別の標本集団を作成する.なお,最も生産性が高いのはグループ1で,その逆をグループ4とする.各グループの母集団サイズを把握するためには,先行研究で用いられている国内183大学に所属する教員の総数を把握する.各グループの母集団サイズを把握したら,全体が1となるよう各グループの比率を求める.そのうえで,その比率に応じた人数の教員を各標本集団から教員を無作為に抽出して平均論文生産性を計算するといった操作を,乱数の種を変えながら2000回実行する.このように層化抽出して得られた平均論文生産性の平均値を,層化抽出を行わずに全てのデータを用いて計算した値と比較し,系統誤差を意識したサンプリングの必要性について考察する.
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Causes of Carryover |
本研究は他大学からの協力が不可欠であり,研究内容や目的を伝えながら協力を取り付けている.その結果,現時点で国内33大学のデータを活用できる状況となっている.しかし,コロナ禍により,研究成果に対する意見交換を目的とした他大学への訪問や,その成果を学会などで発表することがままならず,計画通りに予算を執行することができなかった. 次年度以降は,これまでの研究成果に対する意見交換のため,それらの大学の中で強い関心が示されている大学を対象に,社会的な状況を考慮しつつ,訪問していきたいと考えている.研究成果の発表についても,主に国内の学会や研究会を対象とする形で,計画を立てていきたい.
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