2020 Fiscal Year Research-status Report
児童書出版者のハビトゥス:児童書を取り巻く他業種との比較から
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18K18334
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Research Institution | Seitoku University |
Principal Investigator |
片山 ふみ 聖徳大学, 文学部, 准教授 (80507864)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 絵本 / 行為論 / 選書論 / ハビトゥス / ライフストーリー / 出版社 / 司書 / 保育士 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、出版者を中心に児童書を取り巻く大人たち(司書、保育士、幼稚園教諭、書店員等)の軸足の違いや共通性を多層的に把握しながら、彼らのハビトゥス(思考、価値観、行動様式など)を明らかにすることによって、広い意味での子どもの読書環境や児童書の選書過程を把握することを目的としている。 2020年度は新型コロナウイルス感染症流行下において研究を遂行するため、研究計画の練り直しをせざるをなかった。企画していたインタビュー調査を取りやめ、研究方法の一部を内容分析等、人との接触のないものに切り替えることとした。具体的には、公共図書館員のハビトゥスに迫る目的で、以下のような三つの調査研究を行った。 一つ目は司書養成課程における絵本観の育成を把握する目的で、司書資格取得のために文部科学省が指定する「図書館に関する科目」の必修科目である「児童サービス論」の教科書に着目し、そこで推薦される絵本の傾向と選書についての記述を分析する研究である。二つ目は、公共図書館員の就職後の絵本観を探る目的で、各図書館で提供されるブックリストの傾向分析と、過去に実施した公共図書館員へのインタビュー調査の再分析である。三つ目は図書館員が収集を忌避すると考えられている特定資料への図書館員の意識を収集方針、選書基準の分析等から明らかにしようとする研究である。 これら3本の調査研究のうち2本を査読付き研究雑誌に、1本を査読のない研究雑誌に投稿し、すべての掲載が決定した。1本は発行済、2本は校正中である。 また、本研究で国内の特定地域を対象に実施した、図書館司書、保育士、幼稚園教諭、子育て支援センター職員への事例調査についての講演を行った。加えて、研究成果を反映したテキストの執筆も行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
【研究実績の概要】で述べた通り、論文での研究成果の発表を一定数実施できてはいるが、新型コロナウイルス感染症の流行拡大により、インタビューがすすまなかったためそれをベースとした量的調査に向けた調査設計もできなかったこと、出版者への調査が進んでいないこと、2018年度に実施したカナダにおける調査についての成果報告がまだ実施できていないこと、の3点について課題が残っているため。
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Strategy for Future Research Activity |
2021年度の本研究の今後の推進方策として、以下の通り研究を進める予定である。 1.2018年度に実施したカナダにおける調査について、日本とカナダの状況を比較し、日本と英語圏における子どもの読書環境の相違点や共通点を考察し研究論文として発表する。 2.出版者へのインタビュー調査と報告。 3.量的調査に向けた調査設計。
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Causes of Carryover |
新型コロナウィルスの感染拡大を受けて、追加調査のために予定していた出張が一切できなかったことが次年度使用額が生じた主たる理由である。次年度は、予定していた追加調査の交通費および、実施した調査のテープおこし業者委託費などにあてる。
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Remarks |
片山ふみ「大人が子どもによむ絵本の選び方:職業による絵本に対する意識から」松戸市立図書館・聖徳大学連携事業 子ども読書推進センター10周年記念 児童文学講座,2021年,招待講演 聖徳大学図書館情報コース片山ゼミ3年、片山ふみ「学校図書館にはどのような情報技術が求められているのか?:利用者のニーズから」図書館総合展 ポスターセッション 2020年(カルチャー・ジャパン賞, 来場者投票賞受賞)
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