2020 Fiscal Year Research-status Report
伴侶動物としてのウマの社会的知性を探る:個体から集団までの多階層的アプローチ
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18K18342
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
リングホーファー 萌奈美 京都大学, 高等研究院, 研究員 (20767339)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | ウマ / 他者理解 / 行動の同調 / 個体~群間レベル / 飼育下・野生下環境 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では飼育下・野生下ウマを対象に、他者への「心的状態の理解」と「行動の同調」に着目し、個体から集団までの多階層的視点からウマの社会的知性を検証することを目指している。 飼育下においては、ヒトの指差しコミュニケーションと知識状態に対する、ウマの理解能力を検証する実験を行った。ここでは、二人のヒトの知識状態(餌の隠し場所を知っている・知らない)を操作し、ウマが餌場所に関する正しい情報をもつ(餌場所を知っている)ヒトの指差しを参照し、隠された餌を見つけられるかを検証した。さらに、各個体の実験状況への注意力と実験成績との関連性も調べた。結果、注意力が高いウマは、正しい情報を持つヒトの指差しを参照して正答することができた。この研究をまとめた論文は、現在投稿中である。また奈良先端科学技術大学院大学の協力のもと、障害飛越を行う際のウマとヒトの動きに関するデータを収集し分析を進めている。 野生下においては、コロナウイルス感染拡大のため本年度の野外調査はできなかったが、これまでに収集した行動観察データをもとに解析や論文執筆を進めた。ポルト大学CIBIOの協力のもと、採取した糞を用いて遺伝子やホルモンを分析し、血縁度・ホルモン値と社会行動との関連性の検証を行っている。引き続き本検証を進め、結果を論文にまとめる予定である。またドローンで撮影した群れの映像を用いた個体の配置と動きの解析から、採食中や移動中における群内個体間の行動調整の特性を明らかにし、群れの動きを表現する数理モデルも構築した。この研究にかんする論文は、1つは公表済み、1つは投稿中である。さらに群内レベルだけでなく群間レベルでの分析も進め、複数群の空間配置には群サイズや群構成に応じていくつかのルールが存在し、ウマの社会には重層性があることが示された。この研究にかんする論文は、公表済みである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
飼育下ウマにおける研究は、コロナウイルスの感染拡大により実験データの収集が少し遅れているが、おおむね順調に進んでいる。野生下ウマにおける研究では、コロナウイルスの感染拡大により野外調査は行えなかったが、データ分析を進めることができた。これらの研究の成果は、国内外の学術雑誌や学術図書における執筆、国内外の学会やシンポジウムにおける発表を通して、公表した。以上から、本研究は順調に進展しているといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
飼育下ウマにおいては、引き続きウマが持つヒトへの理解能力を探るとともに、ヒトとウマとの行動の同調特性にかんする分析も進めていく予定である。 野生下ウマにおいては、コロナウイルスの感染拡大により野外調査の実施が難しい状況ではあるが、これまでに収集した糞サンプルや行動観察データがある。これらを用いて、個体・群間の社会関係および群れ構成と、血縁度・ホルモン値との関連性を検証しながら、個体~群れレベルまでの行動の同調特性を分析していく予定である。
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Causes of Carryover |
当該年度において、コロナウイルスの感染拡大によって野外調査や学会発表に伴う国内・外渡航が生じなかったため、さらに産前産後休暇(2021/2/6~5/14)を取得し研究を中断したため、助成金を予定通りに使用できなかった。育児休業(2021/5/15~9/30予定)後は研究を再開し、引き続き当該研究に関わる認知実験や行動観察、論文執筆、国内外における学会発表を行い、助成金を使用する予定である。
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Remarks |
【他の業績:講演など】 1. リングホーファー 萌奈美 「動物行動学および比較認知科学のすすめ:観察と実験から動物の心を探る」、帝京科学大学の授業(アニマルサイエンストピックス)での講演、オンライン開催、2020年7月 2. リングホーファー 萌奈美「個体~社会の複数レベルからウマの社会性を探る」、京都大学理学研究科主催 MACSセミナーでの講演、オンライン開催、2021年1月
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Research Products
(15 results)