2021 Fiscal Year Research-status Report
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18K18345
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
星野 英一 慶應義塾大学, グローバルリサーチインスティテュート(三田), 特任助教 (00816796)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 情景認知 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、情景を見たときに感じる馴染み感について、情景に含まれる物体同士の位置の関係性から究明することを目指して計画した。私達は網膜を通して二次元の視覚情報を受容する。ここでは、情景を複数の物体が配置された二次元情報と定義する。先行研究により物体同士の位置関係の起こりやすさが、情景を分類する際に手がかりとなることが分かっている。しかし、どのような位置関係がどの程度馴染み感に関係するのかについては詳しく分かっていない。そこで、異なる視覚的パターンの違いを定量化する手法と視覚的パターンを探索的に生成するプログラムを組み合わせて、従来検討が難しかった分類に関わる視覚的パターンが持つ情報量に対するヒトの感受性を調べることを目的とした。 これまでに上記の視覚的パターンを探索的に生成するプログラムを用いた実験を行い、その結果から情景の類似度に関係する情報について検討を行っている。今年度(R3年度)は、昨年に引き続き新型コロナウイルスの影響で初年度に行った実験を発展させた実験が行えず、計画に遅延が生じた。しかし、取得済み実験データを対象に、確率モデルを用いて新たに複数の解析を行いさらなる考察を行った。また、昨年得られた成果である時間的近接性の影響について詳しく検討を行った。その結果経験に応じて特定の位置関係や類似度の関係の情報が学習される傾向が見られた。当初行う予定であった投影機を用いた視覚刺激呈示実験を行うための機器の購入と準備を行い、追加実験ができる準備を進めてきた。本年度はこれまでの成果で未発表のものをまとめて発表を行う。また今後は視覚的パターンが持つ情報量に関する考察を様々な観点から行い、学会報告や学会での議論を踏まえて、体系的な説明を試みる予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究はこれまで行ってきた情景認知に関する研究をさらに詳細に深め、視覚情景の分類に関わる情報を同定するため、実験を行ってきた。これまでに視覚的パターンを探索的に生成するプログラムを作成しリアルタイムで探索的な実験が行えるようになった。今年度(R3年度)の目標は、1. コロナ禍で実現可能な実験を行うこと、2. 時間要素をパラメータに含む学習モデルによる解析を行い、情景同士の類似度に関わる情報について考察することであった。まず目標1.に関しては、昨年立てた計画通りに進めることができなかった。オンライン実験を画策したが想定外に統制が難しく、研究目的に適う実験が策定できなかったためである。代わりに当初行う予定であった投影機を用いた実験を行う準備を進めてきた。目標2.に関しては、様々な観点からデータ解析を行うことができ概ね達成できた。また関連研究を整理しやすくする環境を改善し、論文サーベイを効率的に進められるようにすることができた。さらに情景の類似性に関する解析に加え、確率モデルを用いた解析を新たに行い、経験に伴い学習が進む様子を数量的に記述する試みを行った。この成果をまとめて発表することを本年度行う予定であるが、そこで出てきた未解決の問題についてもさらに発展させた実験で明らかにできるようにすることを目指している。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度(R4年度)は新型コロナウイルスの影響が緩和されることを見込み、当初予定していた実験に準じる発展させた実験を行う。この実験にはこれまでの多面的な解析結果の成果を反映し、実験変数として組み込む。具体的には、今年度(R3年度)準備した投影機を用いて情景の見え方の違いが情景認知にどのように関わるかを検討する。準備ができ次第、被験者の募集を行い、実験を行っていく。また、今年度までの成果をまとめ論文化を目指す。新たに学会発表できる成果ができたときは発表できる学会があるか検討し、学会発表を通して議論を深める。情景の類似度判断が経験とともにどのように学習され、要素の並びの頻度と時間的近接性の両方とどのように影響を受けるのかについての解析を検討する。最終的には、ヒトが情景を分類する際にどのような情報を利用しているのかが定量化され、情景に対する馴染み感の要因が説明できるようになることを目指す。
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Causes of Carryover |
当初の予定通り、延期していた実験や解析用の機材の購入に使用する予定である。学生実験参加者への謝金を計上していたが、今年度は予備実験を研究者自身で行ったため費用が発生しなかった。この分は次年度の実験参加者の謝礼に当てる。また、新型コロナウイルスの影響で参加を見送った国内学会、国際学会については、次年度のでの学会発表参加費に当てることにした。残りは当初の予定通り、論文投稿費や英文校閲に支出する予定である。
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