2018 Fiscal Year Research-status Report
Navigation in fiddler crab: Interaction between visual orientation and path integration and its co-evolusion with social behavior
Project/Area Number |
18K18348
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
村上 久 東京大学, 先端科学技術研究センター, 特任助教 (20755467)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 空間認知 / ナビゲーション / 社会性 / 経路統合 / 視覚 / シオマネキ / 逃避行動 / マルチモダリティ |
Outline of Annual Research Achievements |
動物の空間認知における多感覚相互作用のモデルとして、競合する各感覚情報の信頼度を、重み付け平均化するというモデル(ベイズモデル)が注目されている。しかし環境の急激な変化などにより、通常一致する感覚情報間で齟齬が起こる場合、経験的重み付け困難ではないか。こうした問題に対し、本研究では、外敵の出現に際して極めて正確かつ俊敏な逃避的帰巣行動を行うオキナワハクセンシオマネキというカニを研究対象とした実験を行った。ここでは、通常一致するはずの経路統合(動物が自身の運動軌跡を積算し出発地点を常時“追跡”するという能力)と視覚の間に齟齬を提示し、両者の相互作用様態を調べた。結果として、我々が提案する排他的シフトモデル(経路統合に従いながら、視覚的キューを絶えず探索・評価し、帰巣終盤に排他的にシフトする)が従来仮説(視覚と経路統合の折衷案的振る舞い=ベイズモデル)よりも支持された。この結果は、動物が想定外な状況(ここでは迅速な意思決定が必要で、かつ通常一致している感覚情報間に齟齬がある状況)に立たされたとき、経験に基づいた意思決定の後に行為が実行される(ベイズ的意思決定)のではなく、行為の最中にリアルタイムで情報を探索し意思決定が行われることがあり得ることを示唆する。これは各情報の信頼度の蓄積を待つのではなく、特定の感覚情報から規定する運動プランに沿ながら、環境から与えられる不意の変化に即時対応し、運動をシフトすることが可能な適応的戦略であると言える。この意味で、本研究はスポーツなどにおける習慣的な素早い一連の身体動作において、いかにして環境変化に対応した突然の運動遷移が可能かという議論に比較認知的モデルを与える。これらの結果はAnimal Behaviour誌に採択された。また日本動物行動学会第37回大会にて口頭発表が行われた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初、上述の環境が動的に変化する状況における動物の多感覚相互作用・運動戦略、およびその社会的行動との関係に関する比較認知的モデル構築を進めて来た。ここでは、動物は事前に規定された特定の運動プランに従いながらも、絶えず他の運動の可能性を担保し、未知な刺激に臨機応変に対応可能としているという示唆が得られた。この点に関し、ヒトの集団行動におけるデータ解析が可能となったことから、当初想定していた以上の進展が得られた。こちらでは動的な人流が作るレーン形成場における歩行者の運動戦略に新たな事実を発見した。通常人流におけるレーン形成がなされたあと、その構造は比較的安定に保たれると考えられる。一方で、我々はこのようなレーンの形成がなされつつあるとき(またレーン形成は常に安定ではなく、ある場合、一見レーン形成がなされた後においても)、実は歩行者は集団内部で運動し、自身の経路をリソースとした探索と搾取のジレンマを解消する運動戦略をとっていることがわかった。この意味で、歩行者はレーン形成に従いながらも、積極的に他の運動可能性を探索し臨機応変に対応していると言え、我々のモデルを強化する結果と考えられる。これらの結果はJournal of the Royal Society Interfaceなどに受理された。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究では、以上のような運動戦略と、その社会的振る舞いとの関係を明らかにしていく。すなわち、社会的行動がもたらす運動戦略への揺らぎや他個体との相互作用=動的な境界条件においてどのように意思決定が変化するかを理解するため、シオマネキのナビゲーションだけでなくヒトの集団行動においても積極的に解析していく。シオマネキの方では、より明確に社会的行動(求愛行動)を実験で導入し、それによりもたらされる運動戦略への影響を検証し理論的にも検証していく予定である。またヒト群集においては、以前から我々がミナミコメツキガニやアユの集団の実験・計算機モデル上で提案している予期行動が、ヒト集団においても近年重要視されており、また我々の研究により以上のような運動戦略を実現するためにも必須であることが分かりつつある。この点に関して評価可能な実験系・モデル構築を進めて行く予定である。
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Causes of Carryover |
主として旅費が予定よりも節約できたため。次年度の旅費、英文校閲費、論文オープンアクセス費等に使用する。
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