2018 Fiscal Year Research-status Report
腸内食物輸送の数値シミュレーションによるヒト腸内の栄養素吸収過程の流体力学的解明
Project/Area Number |
18K18353
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Research Institution | Hirosaki University |
Principal Investigator |
宮川 泰明 弘前大学, 理工学研究科, 助教 (60804599)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 小腸 / 攪拌 / 吸収 / 計算生体力学 |
Outline of Annual Research Achievements |
食物の消化・吸収過程は胃から小腸に渡る複雑な現象であり,さらに,消化管内の流動を実験的に計測することは困難であるため,その背景にある力学はほとんど明らかになっていない.本研究では「小腸内のどこで,どのように栄養素が吸収されるのか?」を数値シミュレーションによって明らかにすることを目的としている. 本年度は,小腸内における栄養素吸収に関する基礎的知見を得るために,単純化された2次元小腸モデルを構築し,小腸壁の運動と小腸内の栄養素の攪拌・吸収の関係を調査した. 2次元チャネルにぜん動・分節運動を模擬した壁運動を与えることで単純な小腸モデルを構築した.小腸内の流れ場はALE有限要素法を用いて解き,攪拌の定量化のために小腸内部にトレーサー粒子を多数配置し,その分散の時間変化から小腸内の攪拌量を評価した.構築した小腸モデルを用いて,ぜん動運動・分節運動といった小腸壁の運動や小腸寧要物の粘度を各種パラメータとするパラメトリック計算を行い,小腸壁の運動が小腸内の栄養素の攪拌および小腸壁からの吸収に与える影響を調査した. 低レイノルズ数領域において,分節運動は単なる往復運動のため,内容物をほとんど攪拌することは出来ないが,ぜん動運動によってある程度小腸内の栄養素が攪拌されることが明らかになった.一方,高レイノルズ数領域においてはぜん動運動よりも分節運動の方がより小腸内容物を攪拌することが明らかになった. 小腸壁からの栄養素の吸収については,現在パラメトリック計算中であり,今後随時解析を行っていく予定である.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
単純化された小腸モデルは既に構築が完了している.現在は構築したモデルを用いて,小腸内の栄養素の攪拌・吸収に関するパラメトリック計算を進めており,おおむね順調に進展している.
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Strategy for Future Research Activity |
今後は実形状小腸内食物輸送のCFDシミュレータの開発を行う.構築したシミュレータを用いて,小腸壁の運動モードや栄養素の拡散係数,壁面透過率をパラメータとする大規模パラメトリック計算を行い,ヒト小腸内の栄養素吸収過程を定量化する.具体的には以下の項目について重点的に解析を行う. ①運動モードと小腸内の栄養素吸収の関係の解明 開発した小腸内食物輸送のCFD シミュレータを用いて,ヒト小腸内での栄養素吸収現象を解析する.ここでは特に,ヒト胃内での運動モードと栄養素吸収の関係を解析する.運動モード,栄養素の拡散係数,壁面透過係数を入力パラメータとする大規模パラメトリック計算を行い,小腸内のどこでどのように栄養素が吸収されているのかを定量化する.
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Causes of Carryover |
NVIDIA社より最新のグラフィックカードを購入し,数値計算に使用する予定であったが,倍精度演算のサポートがなく,数値計算に向かないことが明らかになったため,20万円を次年度に繰り越した.次年度以降のグラフィックカードの倍精度演算サポート状況を見て,購入するグラフィックカードを新たに選定し,購入する予定である.
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