2018 Fiscal Year Research-status Report
CFD analysis on MR enhanced wall for investigation of mechanism of aneurysm instabiity
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18K18355
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
安西 眸 東北大学, 流体科学研究所, 助教 (50736981)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 数値流体解析 / 血管造影MR / 脳動脈瘤 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では数値流体力学解析(CFD)により血管壁にかかる血流ストレス分布を算出し、磁気共鳴画像(MRI)より得られる炎症反応(増強効果範囲)分布と照らし合わせることで、血流が壁面の生化学的反応に与える影響を解明することを目的とする。そのため、本年度は特に、医療用画像に対する画像処理、および炎症部位のマッピングに関して研究を行った。 研究協力施設より得た実形状動脈瘤について、壁面の炎症が見られた小型~中型動脈瘤7ケースについて画像解析を行った。そのうち1ケースは複数動脈瘤が発生したケースであり、一方には炎症が見られたがもう一方には見られなかった。また別の1ケースでは10年の経過観察を行ったものが1年で成長しており、壁面に炎症が確認された。これにより、同一個人内での炎症部位の比較、および炎症部位と成長部位の比較が可能となる。 また、画像処理に関して深層学習を用いた血管抽出手法の検討も行った。本手法では医療用画像を手動で抽出したのち、これを教師データとしてネットワークを学習させる。その結果、学習させたネットワークでは、血管領域の抽出は90%を超える精度で抽出が可能となった。しかしながら、動脈瘤部位に関しては血管部位との区別が難しいという結果も得られており、したがって親血管・動脈瘤の分離を行うためにはより多くの医療用画像を用いて学習させる必要が示唆された。さらに、血管抽出に際してネットワークに入力する画像の最適化は行われておらず、入力手法やラベル付け法を調整することで、より詳細な領域抽出が可能になると見込まれる。本項目については国際学会および国内学会で発表を行っている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度の研究は、当初見込みを十分満足するものである。医療用画像の処理はこれまで手動で人間のオペレータが行ってきていたため、オペレータ間での差異や揺らぎが避けられないものであった。そのため1ケースに対しても複数人で行い、平均を取る等の処理が必要であった。本研究で検討された深層学習等、機械的手法を用いて行うことで、精度の均一化と大幅な時間短縮が見込まれる。上述の通り未だ親血管・動脈瘤の分離は難しいが、血管部分のみの抽出でもオペレータ間で形状に大きな差が生まれ、CFD解析の結果が異なることが知られている。今後ケース数の増加を見込み、均一的な血管抽出を行う手法を提案することは本研究において重要な進捗である。今後ケース数の増加に伴う、ネットワークの再学習が必要である。 本年度までに7例の動脈瘤患者の画像解析を行っており、すべてが小型~中型動脈瘤である。小型動脈瘤では特に、破裂率と治療による負担のバランスから、手術の判断が難しいとされている。3次元再構築された形状からは、6ケースでブレブが見られず、動脈瘤治療の基準の一つである「歪さ」はほぼ見られなかった。したがって、形状因子からは治療の対象とはならない。しかしながら、本研究で示す炎症が動脈瘤の不安定性に強く相関があることから、現在あるいは今後、壁面の変性が進行していることが示唆される。MR検査と数値流体解析によって、破裂確率の高い動脈瘤をスクリーニングすることにつながる可能性が示唆される。
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Strategy for Future Research Activity |
令和元年以降はこれまでに画像解析を行った動脈瘤に対してCFD解析を進め、壁せん断応力(WSS)分布の算出を行う。これまでの生体外細胞実験および臨床的研究より、血管内皮細胞がWSSによって炎症を発生する可能性が示されている。特に低WSSおよび高WSSのどちらにおいても、炎症反応が発生すると知られている。本研究ではCFD解析による詳細なWSS分布およびMRによる炎症分布が3次元的に得られるため、これら2つの照らし合わせを行う。 そのためには、相関関係を取るため2つの異なる種類のボリュームデータのAlignment作業が必要となる。しかしながら炎症部位は造影MRで撮影されるが、CFDに用いる血管抽出には、より解像度の高い回転撮影3Dアンギオグラフィーが用いられる。したがって、患者の頭部位置や回転、画像サイズがそれぞれ異なるデータとなっている。これら2つのデータを比較するため、標準脳の作成で使われる線形回転移動のアルゴリズムを適用し、位置合わせを行うパイプラインを構築する。 そののち、位置合わせされたCFD結果および炎症マップについて、CFD結果の各ノード点におけるTime-Averaged WSS (TAWSS)、Oscillatory Shear Index (OSI)を算出し、MRによる炎症の有無(0/1)に対する相関係数を求める。また、これらの流体力学的パラメータおよび壁面の曲率を用いて多変量解析を行う。これは親血管部分、動脈瘤部分に分けて求める。これにより、血流による力学的負荷と炎症の関係を調べる。 また、より直観的な炎症-流体力学パラメータの相関の理解を得るため、3次元的に可視化するための手法開発を要する。
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Research Products
(14 results)