2018 Fiscal Year Research-status Report
生体模倣設計に基づいた抗がん性ナノ粒子の設計と評価
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18K18380
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
高橋 治子 広島大学, 理学研究科, 助教 (70775767)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 合成高分子 / 抗がん剤 / ドーマント |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では具体的に、①Host Defense Peptide (HDP)を模倣した膜活性ポリマーの合成とナノ粒子化、および②がん微小環境モデルを用いた抗がん性ナノ粒子の有用性の検討の2つの項目について検討することを目的としている。 1年目である本年度は、主に項目①に関して検討を行った。メタクリロイル基の可逆的付加開裂連鎖移動(RAFT)重合により、側鎖に種々のカチオン性基と疎水性基を有するカチオン性両親媒性ランダムコポリマーを合成し、合成したポリマーのがんに対する選択的な抗がん活性について検討した。その結果、高い抗がん活性と低い毒性を示す、最も適した両親媒性のバランスを有するポリマー構造を明らかとすることができた。この最適化したポリマーでは、正常な血管内皮細胞などには毒性が低く、がん細胞のみを選択的に殺すことができること、また、この細胞死はがん細胞膜の選択的な破壊によるものであることを明らかとした。さらに、この膜活性機構を用いることで、従来の抗がん剤に対して耐性を示す、細胞増殖が低い休眠状態のがん細胞をも高効率に殺すことができることを証明した。また、がん細胞が集合した固形がん様のスフェロイドに対しても、膜活性により破壊することができることも観察されたため、「固形がんの深部まで到達可能」で、固形がん内の「休眠状態(ドーマント)のがんにも有効」な抗がん性ポリマーであることが示唆された。 これらの研究結果を、Scientific Reports誌に発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
今年度の予定であった項目①に対して十分な結果が得られたことに加え、論文発表まで行うことができたため、計画以上に順調に進められていると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
2年目は、研究計画の項目②について重点的に進める予定である。項目①の検討でポリマーの抗がん活性の評価と、さらに休眠状態(ドーマント)のがん細胞へも活性を示す十分な確証が得られたため、今後はがん細胞と正常細胞を独立に検討する段階から、血管様な管腔構造をもつ3次元in vitro微小血管チップ中でがんスフェロイドを共培養することにより、内部にドーマントながん細胞ももつ固形がんモデルと、抗がんナノ粒子の投与経路となる血管モデルを組み込んだ複合系(がん微小環境中)における抗がん活性へと発展させる。既に血管様構造とがんスフェロイドそれぞれの培養は確立されているため、共培養を行い、そこへ最適化したポリマーを添加して、がん微小環境中での活性について、引き続き検討を行っていく予定である。
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Causes of Carryover |
学会活動旅費、論文投稿関連経費などにおいて、招待講演であったことや共同研究先との共同論文執筆であったことなどにより、当初より使用必要額が少額であるが約25000円抑えられた。本助成金は、2年目の活動において、消耗品費や旅費、論文投稿関連経費などに使用する計画である。
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Research Products
(3 results)