2019 Fiscal Year Research-status Report
腫瘍への選択的迅速集積と長期滞留を実現する代謝制御型ホウ素送達システムの開発
Project/Area Number |
18K18383
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
野本 貴大 東京工業大学, 科学技術創成研究院, 助教 (00734732)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 高分子コンジュゲート / ボロノフェニルアラニン / 中性子捕捉療法 / ホウ素デリバリー / 機能性高分子 / 生体適合性高分子 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は主にボロノフェニルアラニンのボロン酸部位に結合するための、高分子の側鎖構造について研究を進めた。まず、ポリリシンを基本骨格として側鎖にグルコンアミド構造を有する高分子を合成し、そのボロノフェニルアラニンに対する結合力を評価したところ、極めて高い結合力を示すことが明らかとなった。そして、この高分子がボロノフェニルアラニンの生体活性を高めるかを調べたところ、結合力から期待されたほどの効果は得られなかった。この原因として、グルコンアミドとボロノフェニルアラニンから構成される複合体の構造がかさ高いために、アミノ酸トランスポーターの認識部位まで到達することが困難であることが考えられた。そこで、複合体の構造をより平面的にしてかさ高さを減らすために側鎖構造をカテコール構造にした高分子を合成しその効果を評価したところ、グルコンアミド構造よりも優れたボロノフェニルアラニンの活性向上が見られた。これらのことから、ボロノフェニルアラニンの効果を向上するためには、高分子側鎖の立体構造が極めて重要であることが示唆された。 また、側鎖構造の検討に加えてポリビニルアルコールのボロノフェニルアラニンに対する効果も精査を進めた。昨年度は主にRAFT重合により合成したポリビニルアルコールを使用したが、今年度は市販品のポリビニルアルコールを用いて検討した。その結果、市販品のポリビニルアルコールでも同様にボロノフェニルアラニンの活性を高めることが明らかとなった。本研究で提案したコンセプトは臨床的に有用であると期待される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の予定通り、高分子の側鎖構造がボロノフェニルアラニン-高分子複合体の生体活性に与える影響を部分的ではあるものの明らかにすることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの検討で得られた知見を学会等で発表し論文にもまとめる予定である。そのために必要な再現性の確認等も行いたいと考えている。ただし、COVID-19の影響により円滑に追加実験を行うことができない可能性もあり、随時柔軟に対応してこれまでの成果をまとめることも考えている。
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Causes of Carryover |
今年度前半は当初の計画よりも研究が順調に進展したが、年度末近くではCOVID-19等の影響により研究の一部を中止せざるを得なくなり次年度使用額が生じた。 次年度使用分については、側鎖に糖構造を有する高分子とボロノフェニルアラニンから構成されるホウ素送達システムについて有望なデータが得られているものの、当該内容についての論文投稿に際し、正確を期すための再現性実験等を行う必要があるので、それに使用する。また、論文内のディスカッションの内容を深めるために現在までに得られている知見を学会等にて共有し、他の研究者からの意見を得るためにも使用する予定である。
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Research Products
(19 results)