2018 Fiscal Year Research-status Report
Optimization of organic-inorganic hybrid preparation based on electron microscopy and synchrotron radiation spectroscopic analysis studies
Project/Area Number |
18K18388
|
Research Institution | National Institute of Advanced Industrial Science and Technology |
Principal Investigator |
高橋 知里 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 材料・化学領域, 主任研究員 (50574448)
|
Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
|
Keywords | 有機無機ハイブリッド製剤 / 感染症 / ドラッグデリバリー / 電子顕微鏡 / カソードルミネッセンス / 放射光 / イオン液体 / 金属 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、①薬剤投与のみでは治療効果が得られにくいバイオフィルム感染症治療用の有機無機ハイブリッド製剤の設計を進め、②電子顕微鏡評価及び放射光を用いた分光測定評価から疾患部位に有効な製剤の設計法を探索することである。前採択課題では、ドラッグデリバリー用の高分子ナノ粒子製剤の設計を行い、製剤と病原体の相互作用を可視化するための2つの電子顕微鏡法(イオン液体を応用した形態観察手法及びナノ領域からの蛍光可視化手法)のベース技術を確立している。そこで、本年度は、金属微粒子などの無機材料が持つ安定性と長期徐放性を活かした新規有機無機ハイブリッド製剤の調製を試みた。その結果、50-400 nm程度の銀・金・銅微粒子を複合した様々な高分子製剤を調製することに成功した。抗菌活性評価の結果から、ほとんどの有機無機ハイブリッド製剤はバイオフィルム形成菌に対して高い抗菌活性を保持していることがわかった。放射光を用いたX線吸収微細構造測定を行うことで、含有量が少なく分析が難しいためにこれまで測定がされてこなかった有機無機ハイブリッド製剤の構造を大まかに明らかにすることができた。前課題で取り組んでいた透過型電子顕微鏡にカソードルミネッセンスを組み込んだ手法を用いることで、微量の金属微粒子の存在をカソードルミネッセンス分析で捉えることに成功し、金属微粒子が持つ抗菌効果をナノレベルで明らかにしている。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、薬剤投与のみでは治療効果が得られにくいバイオフィルム感染症治療用の有機無機ハイブリッド製剤の設計として(1) 金属ナノ粒子を複合した製剤の設計、(2) 調製した製剤の抗菌活性効果を実施し、電子顕微鏡評価及び放射光を用いた分光測定評価から疾患部位に有効な製剤の設計法の探索としては、(3) 調製した製剤の形態学的評価、(4) 放射光を用いた製剤の電子状態の評価、(5) X線光電子分光による製剤の電子状態の評価を行った。本年度に計画していた上記の研究に加え、(3)の研究を実施することができた。また、(1)-(5)それぞれの研究において、成果を得ることができた。 【具体的な進捗状況】 (1)の試みで、銀や金ナノ粒子を複合した高分子製剤を調製することに成功した。銀や金ナノ粒子を分散した状態で高分子と複合することによって、抗菌活性効果が著しく向上することを明らかにしている。製剤の抗菌活性効果は、(2)のように物性評価や定量的な抗菌活性評価を行うことで確認している。電子顕微鏡評価及び放射光を用いた分光測定評価を行うことで、製剤の構造および金属ナノ粒子と高分子の化学結合状態を把握することができるため、目的とする効果を発揮できる製剤の設計を可能にしている。合わせてX線光電子分光による評価を行うことで、製剤の表面と深部における科学結合状態の違いを明らかにしている。
|
Strategy for Future Research Activity |
現在、研究は当初の予定に従って順調に進んでいる。しかし、次年度は課題採択者が海外研究に従事するため、日本で研究を当初の予定通りに遂行することが難しいと予想される。次年度以降の予定としては、(1) 放射光を用いた分光測定による有機無機ハイブリッド製剤の評価、(2) 電子顕微鏡法を用いた有機無機ハイブリッド製剤の抗菌活性評価を実施予定である。(1)に関しては、研究協力者である八木教授の協力により実施する。(2)に関しては、研究協力者である武藤教授の協力により実施する予定である。課題申請者が不在のため対応措置として、現在までに調製が成功している有機無機ハイブリッド製剤の評価を研究協力者に依頼し、当初予定していた(1)、(2)の研究を進めていく予定である。 得られた成果は、随時、論文および学会にて発表する予定である。
|
Causes of Carryover |
購入しようとする消耗品の納期が長期であったため、予定をしていた消耗品の購入ができず差額が生じた。
|