2019 Fiscal Year Research-status Report
薬剤徐放と細胞デリバリーを達成する生分解性ポリマーのがん免疫療法への展開
Project/Area Number |
18K18389
|
Research Institution | Kansai University |
Principal Investigator |
能崎 優太 関西大学, 先端科学技術推進機構, 特別任命助教 (90805889)
|
Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
|
Keywords | インジェクタブルポリマー / 薬物徐放 / 免疫ワクチン / 細胞デリバリー / がん免疫療法 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は,体温に応答してゲル化する生分解性インジェクタブルポリマー(IP)を用いて免疫ワクチンを開発することを目的としている.抗原とアジュバントをIPから徐放するシステムを構築し,さらに免疫細胞をIPゲル内に保持させることで,高効率な免疫誘導を達成するIP製剤の組成を明らかにする.本年度は,モデル抗原としてオボアルブミン(OVA)と樹状細胞(DC)活性化機能を高めるためのアジュバント分子として,トル様受容体(TLR9)のリガンド分子であるCpG-DNAを用い,IPの組成を変更することで徐放パターンの異なるIP製剤をマウスに投与してその抗体産生能を調べた.抗原とアジュバントの徐放速度が遅いIP製剤は,より高いIgG抗体価を誘導した.さらに免疫マウスから回収した脾細胞のIFN-g産生を調べた結果,CpG-DNAの放出速度がある程度速いIP製剤を投与したマウスでIFN-g産生が高いことがわかった.本年度は,さらにマウス骨髄細胞由来樹状細胞(BMDC)と蛍光ラベル化OVAとCpG-DNAをIPゲル内に混合して培養し,所定時間培養した後,IPゲルを冷PBSで崩して細胞のみを取り出し,フローサイトメトリーと共焦点レーザー顕微鏡を用いて細胞内への取り込みを評価した.その結果,IP内で細胞を培養した場合でも常法で培養した場合と同程度に細胞取り込みが起きることが分かった.次に培養したBMDCの炎症性サイトカインのmRNAをリアルタイムPCRで定量したところ,IPで培養した方がIL-12のmRNAが上昇することが分かった.さらにBMDCのMHC分子の発現についても免疫蛍光染色により定量し,IP内で培養した場合でも常法で培養したのと同程度の発現量を示すことがわかった.IP内で培養した場合でもBMDCの成熟化が起きることを示すことができた.
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
IPに細胞を混合しない場合で抗原とアジュバントの徐放パターンによる免疫応答の違いを動物実験により示すことができた.細胞を混合した場合でもin vitroの実験はほぼ完了し,in vivo実験を実施する段階まで進行した.このように概ね順調に進展していると考えられる.
|
Strategy for Future Research Activity |
OVAを抗原として発現するマウスT細胞リンパ腫(E.G7-OVA)を接種し腫瘍を形成させたマウスにIP製剤を投与して治療効果を検証する予定である.さらに脾細胞の解析を行うことで投与したIP製剤の組成と治療効果の相関を明らかにする.
|
Causes of Carryover |
2019年度に行う予定であった動物実験について実験施設の使用許可申請に時間を要したため,未使用額が生じた.このため2020年度にあわせて実験を行うこととした.
|