2020 Fiscal Year Research-status Report
薬剤徐放と細胞デリバリーを達成する生分解性ポリマーのがん免疫療法への展開
Project/Area Number |
18K18389
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
能崎 優太 東北大学, 薬学研究科, 助教 (90805889)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | インジェクタブルポリマー / 温度応答 / 生分解性 / 免疫 / ワクチン |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は,体温に応答してゲル化する生分解性インジェクタブルポリマー(IP)を用いて免疫ワクチンを開発することを目的としている.抗原とアジュバントをIPから徐放するシステムの構築し,さらに免疫細胞をIPゲル内に保持させることで,高効率な免疫誘導を達成するIPワクチンシステムを開発する.モデル抗原としてオボアルブミン(OVA)と樹状細胞(DC)活性化機能を高めるためのアジュバント分子として,トル様受容体(TLR9)のリガンド分子であるCpG-DNAをIPに混合することでワクチンを調製した.本年度は,OVAを発現しているマウスTリンパ腫(E.G7-OVA)を背部皮下に接種することで担がんしたマウスにIPワクチンを投与して,腫瘍の成長をモニターした.抗原とアジュバントの放出が速いIPと遅いIP製剤をそれぞれ投与したグループとIPを用いずにOVAとCpG-DNAを投与したグループで抗腫瘍効果を比較した.また各マウスから採取した脾細胞のIFN-g産生能は,抗原とアジュバントの放出が速いIPを接種した場合に高くなった.これらの結果は,放出の速いIPは細胞性免疫を誘導するのに優れていることを示していると考えられる.さらにマウス骨髄細胞由来樹状細胞(BMDC)とOVAとCpG-DNAをIPに混合し,担がんマウスに投与したところ,IPを用いて投与したグループの方が,あらかじめOVAとCpG-DNAとインキュベーションしたBMDCを投与した場合に比べて,腫瘍成長抑制効果が高いことが分かった.また,これらのマウスの抗原特異的な血中抗体価についてもIPを混合して投与した方が高くなった.以上のようにIPに細胞を混合することで免疫誘導能を向上させることができた.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
IPに抗原,アジュバントを混合したワクチン製剤やさらに樹状細胞を混合した場合で,担がんマウスに投与した場合の治療効果を検証することができた.投与する細胞数やIPの組成については次年度に最適化を行う.
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Strategy for Future Research Activity |
本年度で得られた知見を基に投与する細胞数やIPの組成を変更して,治療効果の最適化を図る.さらに投与した細胞の体内動態を調査することで,治療効果の向上メカニズムについて調査する予定である.
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルス感染症により学会等がオンラインで開催されたため旅費が低くなった.このため次年度に予定していた合成実験を前倒しして行うことで予算の使用に努めたが,次年度使用額が生じた.翌年度分は成果発表のための論文投稿費用に使用する予定である.
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