2018 Fiscal Year Research-status Report
薬剤フリーで創る高機能足場:生体内環境の再現と応用
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18K18390
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Research Institution | National Institutes for Quantum and Radiological Science and Technology |
Principal Investigator |
大山 智子 国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構, 高崎量子応用研究所 先端機能材料研究部, 主任研究員(定常) (90717646)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 生体材料 / 微細加工 / 機能化 / 量子ビーム / 足場 / 医療・バイオデバイス / コラーゲン / ゲル |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、「生体適合性を保持したまま生体材料の物性と構造をナノ・マイクロスケールで3次元制御し、生体内環境を再現して細胞機能を引き出す高機能足場を創出する」ことである。これまで培ってきた量子ビーム(高精度に制御した各種放射線)を駆使した高分子材料の改質・微細加工技術をバイオマテリアルに応用し、培養基材によって細胞機能を制御しようという分野横断研究を展開する。 初年度にあたる平成30年度は、量子ビームが誘起する架橋反応により、架橋剤等の薬剤を使用せずに、生体内における細胞周囲環境の主成分であるコラーゲンをハイドロゲル化する技術を確立した。ゲルは量子ビームの照射量などにより、生体内の軟組織と同じ約1~数100 kPaの弾性率範囲で正確に調製することができる。また、生体適合性だけでなく、生分解性も保持していることも確認された。 このゲルを用いて様々な細胞を培養したところ、ゲルの硬さに応じ、細胞形態が大きく変化することが分かった。さらに、量子ビームによる架橋成型技術により、ゲル化と同時に表面にマイクロ構造を付与することにも成功した。本成果は特許を出願し、論文執筆中である。 硬さと形状を同時に制御できるコラーゲンゲルの創出により、生体内環境の成分・硬さ・形状の3要素を再現することが可能となった。細胞周囲の硬さ(Engler et al., Cell, 2006)や微細構造(Dalby et al. Nat. Mater., 2007)は、幹細胞の分化にも影響を与えることが知られている。開発されたコラーゲンゲル上では、生体内とはかけ離れた硬く平坦なディッシュ上では見ることができない、細胞の多様な機能が発現すると期待される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
生体内環境を再現して細胞機能を引き出す高機能足場を創出するという研究目標に向け、プロトタイプとなるコラーゲンゲルを創出し、細胞機能の評価を開始した。順調に進展しており、論文も近く投稿予定である(学会発表3件、特許出願1件)。他にも、得られた知見を応用し、機能性バイオデバイスの研究開発を行っている(論文1件、特許出願2件)。医療・バイオの研究者とも積極的に交流を図り、企業・研究機関等との複数の共同研究へつなげ、積極的に研究を展開している。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、開発したコラーゲンゲルをベースに、成分・硬さ・形状のそれぞれが細胞に与える影響を精査しながら、細胞や引き出したい機能に合わせた最適化を行っていく。
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Causes of Carryover |
旅費の一部に別予算を使用したため、残金が生じた。残金は次年度の旅費と細胞培養関連試薬の購入に充てる予定である。
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