2018 Fiscal Year Research-status Report
3Dバーチャルリアリティと触覚技術を融合させた高齢者リハビリ システムの開発
Project/Area Number |
18K18426
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
佐藤 啓壮 東北大学, 医工学研究科, 特任講師 (90513614)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | バーチャルリアリティ / リハビリテーション / 高齢者 / ゲーミフィケーション |
Outline of Annual Research Achievements |
超高齢社会に於ける社会保障費の抑制について、様々な取り組みが行われる中、リハビリテーションの情報機器システム(ICT)を活用したリハビリテーションの効果を上げる取り組みが期待されている。リハビリテーションの効果を上げるには頻度も重要な要因であるが、近年の医療費の抑制から慢性期には十分なリハビリテーションが実施されているとは言い難い。このような背景の中、ICTの技術を応用して自宅で手軽にリハビリテーションを実施、記録、管理出来るシステムがあれば、近年のインターネットの普及から遠隔でも容易に管理、指導できるシステムが構築できる。我々は既に液晶テレビとモーションカメラセンサを用いた2次元下でのコンテンツ表現による、リハビリテーションシステムを開発し、その効果を報告している。近年、コンテンツの表現が液晶テレビから3次元のバーチャルリアリティ(以下、3D VR)へと急激な進歩を遂げている最中である。表現方法が進化すれば、視覚や触覚情報から導き出される運動に対して更なる効果が期待できる。しかし、近年のハードウェア、およびソフトウェアの急激な進歩により、安易に3D VRコンテンツを高齢者へ応用する事例が多く散見される。一方、視覚情報中心であった3D VRコンテンツが、振動を主とした触覚情報をも加味するコンテンツが出現するようになり、視覚と触覚情報を合わせた複合型3D VRコンテンツの発展性が期待できる。 本プロジェクトでは、現在の3D VRのハードウェアを用い、運動の視点からの高齢者の3D VR実施時の特徴を若年者と比較することを目的とする。これらの基礎データは、今後、更に発展するであろう3D VRの高齢者への応用事例においての基礎情報となる事が期待される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
3D VRはハードウェアを中心に急激な進歩を遂げている最中である。採択後、すぐに3D VR開発の中心地であるアメリカ、ロスアンジェルスで行われた、3D VR EXPOに参加し、様々な開発企業から情報を収集した。結果、3D VRを高齢者へ使用する事例は始まったばかりであり、試験的要素が強いことが判った。本研究では、高齢者の3D VR空間に於ける指先や足先の運動による正確性の若年者との比較を行うため、現時点での最新性と今後の発展性を鑑み、HTC社製のVIVE-Pro(以下、VIVE-Pro)を計測機として選定した。その後、この機のシステム構成下での3次元座標の精度評価を行うため、現実の3次元座標上に配置したキャリブレーションフレーム(50mm×50mm)を作成した。加えて、現実の指先の3次元座標を得るために、手掌~手背をカバーするアタッチメント、加えて指先を固定する治具を製作し、手背面にVIVE トラッカーと呼ばれるマーカーを装着できるように加工して動作を確認した。 更にVIVE-Proから3次元座標生データを取得するソフトウェアを製作し、キャブレーション値と比較する精度評価を若年者にて実施した。結果、X(側方)方向で平均-3.48mm±110.98)、Z(上下)方向で-8.99mm±106.01の精度が得られた。この計測システムでは、視野角に関する計測も可能とした。 ハプティック評価機器は市販の振動ユニットを用いて、振動周波数80Hz(16~999Hz可変)、デューティ比20%(1~100%可変)、電圧2.38V(1.46~3.29V可変)の仕様とした。また、計測時のトリガー出力装置も製作し、脳波計その他の計測機器との時間同期のシステムを構築した。 また、上記計測内容に関しては、既に東北大学大学院医学系研究科研究倫理委員会の承認を得ている。(2018-1-697号)
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Strategy for Future Research Activity |
既に計測システム、および研究倫理の承認を得ていることから、順次計測を開始する予定である。 1.触覚による運動感覚(ハプティック)の若年者との相違:X、Y、Z方向それぞれのハプティック評価機器を用いた運動感覚の閾値を、周波数、デューティ比、電圧強度にて、若年者、高齢者間で比較し、高齢者の特徴を抽出する。 2.3D VR空間上の指先、足先の運動の正確性の若年者との相違:製作した計測システムを用いて3次元空間の中で出現したターゲットを、利き手指先、利き足つま先で補足するタスクを実施させて、反応時間、正確性を若年者、高齢者間で比較する。 3.3D VR曝露下での生理学的変化の若年者との比較:2.の計測と同時に装着した脳波計や脈波、心電図等の生理学的事象計測のデータから、3D VR環境曝露時の若年者、高齢者間の比較を実施する。以上の計測、研究から近年、急激な進歩を遂げている3D VRの高齢者への運動学的視点からのリハビリテーションコンテンツへの可能性と、コンテンツ制作上の基礎データとする。1.については、5月~6月で順次計測を実施し、データを解析の後に国内学会での発表申請を行う事を目標とする。また、2.3.については、7月~11月で順次計測を実施し、データを解析後に論文化、および国際学会発表を目標とする。
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Causes of Carryover |
予定していた計測が翌年度に繰り越したため、消耗品が予定より少なかったため、¥11,352円の繰り越しが生じた。この分は、本年度で計測が本格的に始まるため、使用する予定である。
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