2018 Fiscal Year Research-status Report
DNA big data open up sustainable agriculture system based on plant-microbe association
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18K18432
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Research Institution | Hirosaki University |
Principal Investigator |
杉山 修一 弘前大学, 農学生命科学部, 教授 (00154500)
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Project Period (FY) |
2018-06-29 – 2020-03-31
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Keywords | 土壌微生物 / 作物栽培 / 輪作 / 病害防除 |
Outline of Annual Research Achievements |
植物マイクロバイオームとは葉や根の表面や内部に生息する微生物群集を指し, 近年植物の免疫機能や病害抵抗に大きな影響を与えている可能性が指摘され,世界的に注目を集めている。近年の遺伝子解析技術の飛躍的進歩は,短時間で安価にマイクロバイオームの構造や組成を解析することを可能にした。作物栽培では,年次的に同じ畑に異なる作物を栽培する(輪作)ことで,病害が抑制されることが経験的に知られている。輪作による病害防除は作物の多様性がもたらす土壌微生物叢の変化に起因すると考えられているが,その具体的メカニズムはほとんど分かっていない。本研究ではアブラナ科作物の根に感染するネコブ病をモデルとして,輪作条件を実験的に作り出し,次世代シークエンス技術が産み出すビッグデータを利用し,土壌と作物根のマイクロバイオームの構造変化がどのように病害を抑制するかを明らかにすることを目的として行った。 2018年度は,輪作の影響を土壌微生物から解明する第一段階として,異なる作物が土壌微生物をどの程度変えることができるかを明らかにするために,20種類の作物を同一土壌で育て,根のマイクロバイオームの構造を比較した。7週間生育させた後,根のDNAを抽出し,細菌と真菌のリボソームRNA遺伝子の特異的配列をPCRで増幅後,次世代シークエンス(Illumina社製Miseq)により各部生物群の構成を比較した。その結果,作物の進化系統関係は細菌では根のマイクロバイオーム構成大きな影響を与えたが,真菌では影響が見られなかった。細菌では,一部の群,特にベータプロテオバクテリアが作物の系統関係の影響を強く受け,単子葉と双子葉の作物に顕著な差を生み出していることが分かった。このことから,真菌より細菌が作物の輪作による土壌病害防除に大きな影響を持つことが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
これまでほとんど先行研究がない中で,本試験では異なる作物を栽培することで土壌微生物が大きく変化する可能性が明らかにできたことは,本研究を今後進める上では大きな前進である。特に,細菌と真菌という異なる微生物を比較した結果,真菌より細菌がより深く関与していることがわかり,今後の研究では細菌に焦点を当てて研究を進めればよいことがわかり,方向性も確定できた。
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Strategy for Future Research Activity |
2019年には,多様な20種類の作物を異なるポットで前作として栽培した土壌に,ハクサイを植え,同時に培養したネコブ菌を一緒に前作の異なるポット土壌に植え付け,ネコブ病を発病させる。2週間後から5週間の4回,ハクサイをサンプリングし,根に発病した根のこぶの大きさから病害度を4段階に分けて評価した後,土壌とハクサイの根からDNAを抽出し,細菌のDNAのみを特異的に増幅するプライマーを用い,PCRで細菌DNAを増幅する。 土壌と根から抽出したDNAについて2回のPCRを行い,次世代シークエンス用のサンプルを準備する。1サンプル当たり約20万という大量のデータが得られる。得られたデータからDNAの配列に対応する種をデータベースから同定し,種ごとのDNAコピー数を得る。シークエンス解析から各配列の種同定までの一連の作業は専門業者に外注する。ネコブ病菌を特異的に増幅するプライマーが確立されているので,リアルタイムPCRで菌密度を推定する。得られた細菌DNAの大量データを塩基配列の解析を通じて,各細菌グループの相対比率を求めて,ネコブ病を抑制する細菌グループの特定を行い,輪作がどのように土壌病害の抑制に影響しているかのメカニズムを明らかにする。
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Causes of Carryover |
少額の金額のため,来年度の消耗品の購入にあてるために残した。
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