2019 Fiscal Year Research-status Report
人工知能の内部仕様に結合された人工知能倫理の動的構成
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18K18434
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
堀 浩一 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 教授 (40173611)
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Project Period (FY) |
2018-06-29 – 2021-03-31
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Keywords | 人工知能倫理 / 創造活動支援 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、人工知能の内部仕様の記述と人工知能倫理の記述の間の乖離を埋めるための方策の一つを与えることである。技術哲学における社会構成主義として知られているように、技術が社会を決めるのでもなく、社会が技術を決めるのでもなく、技術と社会は相互に作用する。しかし、残念ながら、現在は、人工知能の技術の進歩のスピードと人工知能倫理の議論のスピードとの違いが大きいために、人工知能倫理の議論を生かさないままに人工知能の技術の研究開発がどんどん進みつつある。本研究では、人工知能の内部仕様の設計と人工知能が社会に及ぼす影響に関わる人工知能倫理の議論との間の橋渡しをするプラットフォームを構築することを目指している。 人工知能への期待が高まると同時に人工知能への不安も高まっている。人工知能の引き起こす可能性のある問題について、倫理や法の観点から世界中で議論が 行われている。しかし、残念ながら、人工知能をめぐるELSIの議論と実際の人工知能の研究開発との間には、乖離がある。 本研究においては、その乖離を埋めるべく、人工知能倫理の議論と人工知能の設計とをつなぐシステムを研究している。昨年度は、その実験システムを構築した。人工知能の設計者が、このシステムに、自分の開発しようとする人工知能 システムの仕様を入力すると、その人工知能システムが社会にどのような影響を及ぼしうるかのシナリオをシステムから受け取ることができる。本年度は、この実験システムの効果を確認するためのユーザスタディを実施した。予備実験においては、研究室内の大学院生に、自分の研究内容を入力してもらい、システムが適切に倫理的な観点からのサポートを行うことができるか、システムの機能の確認を行い、必要な改良を施した。次に、本実験として、プロの研究者、開発者、ベンチャー企業経営者などに、このシステムを使ってもらい、効果を詳細に分析した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
システムの開発は想定よりも順調に進み、上記の通り、システムをプロの研究者、開発者、ベンチャー企業経営者などに実際に使ってもらう実験まで進むことができた。実験の結果は、当初の期待以上であった。すなわち、倫理的な観点を取り入れた人工知能の研究開発を正しくサポートできることを実証できたにとどまらず、このシステムを用いると、創造的な設計が生まれるという現象を見出すことができた。その現象の背景にあるメカニズムを詳細に分析したので、現在、それを論文にまとめているところである。
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Strategy for Future Research Activity |
幸い、我々が作成したシステムが想定以上の効果を生むことが実験により実証されたので、残る期間で、このシステムをさらに多くの方に使ってもらえるように改良を加えたい。また、我々のシステムだけが唯一の解であると主張するつもりはなく、他の様々な方法との共存も図っていきたい。そのための改造も行いたい。
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Causes of Carryover |
本年度までは、当初計画よりも性能の低い安いコンピュータを使って、研究開発を行いました。当面は、量的な機能が必要でなく、推論推薦の機能のみを実装すればよかったためです。 作成した実験システムは、本報告に述べた通り、想定以上の効果をもたらすことがわかりました。 今後は、今年度余らせた予算と次年度の予算を合わせて、もっと高性能のコンピュータを購入して、もっと量的な勝負を行う実験も行うことを計画しています。
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Research Products
(1 results)