2018 Fiscal Year Research-status Report
Cancer risk assessment study on gene polymorphism of bitter taste receptor TAS2R38 and glutathione-S-transferase by analyzing ToMMo data
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18K18442
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
駒井 三千夫 東北大学, 農学研究科, 名誉教授 (80143022)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
白川 仁 東北大学, 農学研究科, 准教授 (40206280)
八巻 美智子 東北生活文化大学, 家政学部, 講師 (50382677)
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Project Period (FY) |
2018-06-29 – 2020-03-31
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Keywords | 遺伝子多型 / 苦味受容体TAS2R38 / 解毒酵素GST / 発癌リスク / 2000人規模解析 |
Outline of Annual Research Achievements |
これまでの苦味受容体TAS2R38遺伝子と解毒酵素(GSTs)遺伝子の遺伝的変異が癌のリスクに関係することを示した疫学研究は、個別の遺伝子型の解析に基づいている。我々の研究では苦味受容機構と肝臓解毒機構の間に強い相互作用があることを初めて示した(①J. Nutr. Sci. Vitaminol., 2017及び②投稿準備中)。しかし、この報告は東北大学病院内の癌患者と健常者を比較したパイロット研究であったため、今回「東北メディカル・メガバンク機構(ToMMo)」のリファレンスパネルの利用により被験者数を増やし、解析対象となる遺伝子とSNPの種類を増やした2000人程度のデータ解析による大きなスケールの研究に発展させた。 先ず東北メディカル・メガバンクのリファレンスパネルより食生活習慣アンケートとTAS2R の一塩基多型(SNP)データを抽出した。遺伝子多型ごとではメジャーアレルの組み合わせである、AVI/AVI、AVI/PAV、PAV/PAVの頻度は、それぞれ18%、47%、34%であり、推定される遺伝子頻度と実際に調べた遺伝子頻度はほぼ一致した(Hardy-Weinberg equilibrium)。一方、マイナーアレル被検者は4パターン見つかり、これが新しい知見となった。次に、米国人の解析で報告されていたBMIとの関連性の解析結果については、米国での先行研究ではTAS2R38のAVI/AVI被検者のBMI値が高いとの報告があるが、今回の結果からは、3タイプのどの多型と比較しても有意な差は認められなかった。75人しか用いていない米国のデータでは、BMIが20.3に対して22.8という差であり、この遺伝子多型の違いが肥満を左右するとまでは言えない。むしろ、1868人を用いた本研究の方のデータが信頼性が高いと判断される。現在GSTの遺伝子多型について解析している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
苦味受容体TAS2Rと解毒酵素(特許申請のため公表できないため、GSTX1とGSTY1は仮称)にはそれぞれ一塩基多型や欠失などの機能的変異が知られているが、我々はこれまでこれらの遺伝子の変異が癌リスクと強い相関があることを発見した。これらの変異は、これまで少人数で解析してきたが、データベースが整備された現在、東北メディカル・メガバンクとの共同研究により解析を進めている。TAS2Rと食生活等のアンケート調査については欧米人を対象とした先行研究が多く、日本人を対象としたデータは少ない。そのため、本研究では東北メディカル・メガバンクのリファレンスパネルより約2000人の被験者の食生活習慣アンケートとTAS2R の一塩基多型(SNP)データを抽出した。これにより臨床BMIや喫煙、飲酒等の生活習慣や苦味に関係する味嗜好などと特定のTAS2Rにおける多型データとの間で相関の有無や有意性について解析した。これが今まで解析している部分である。2年目は、主にGSTの遺伝子多型について解析を進めていく計画であったため、予定通りに研究が進んでいると言って良い。 今のところ、GSTX1(X1, Y1は仮称)の遺伝子多型の違いによる野菜の摂取量について、約2000人のアンケート調査と遺伝子多型解析データを照らし合わせた成果をまとめた。その結果、野菜の摂取量においては遺伝子の違いによって大きな違いは認められなかった。この後は、アブラナ科植物の摂取量と、TAS2R38の多型とのGSTの遺伝子多型の組み合わせ毎の解析を行う。本研究の目的は、多数の被験者に基づいた遺伝子型解析で新しい癌リスク評価法を確立することと、味官能試験やアンケート調査により苦味感受性や食習慣の個人差と遺伝子多型との相関を解析し、発がんリスクに関与する機構を明らかにすることを目標としている。
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Strategy for Future Research Activity |
①苦味受容体TAS2R38および解毒酵素GSTX1とGSTY1(仮称)の多型解析による解析; 苦味受容体も解毒酵素も大きな遺伝子ファミリーを形成するので、ファミリー間の遺伝子型相互作用を研究する。これにより、今後は早期遺伝子診断や癌予防に貢献する新しいリスク評価法を開発することができる。 ②ToMMo(東北メディカルメガバンク機構)のリファレンスパネルドラフト版を用いる共同研究; ToMMoの個人のゲノムデータを利用することで、複合遺伝子型解析を行う。苦味受容体TAS2R38と解毒酵素GSTsの一部は、食習慣と直接関連する遺伝子である。癌リスク因子である喫煙や飲酒等の生活習慣についての調査結果を利用することで、二つの異なるタンパク質の遺伝子型と生活習慣との相互作用の解析を行う。これらのデータを総合的に組み合わせることで、個人ごとの癌リスクの予測とテーラーメードの栄養指導が可能となる事を提言していきたい。 以上はin silico解析を中心に進めるが、最近当研究室では、マウスのTAS2R(mT2R)がある臓器やマクロファージにも発現している事を明らかにした。このため、この実験系も組み入れて発癌に関わる抗炎症作用機構についての解析も進める。GSTsは解毒酵素のため、もともと抗癌・抗炎症に関与しているため、研究の一部にこのTAS2Rの実験的な新規機能解析も含める。
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Causes of Carryover |
当研究課題が7月末の決定であったため、実質は8月からの研究開始となっている。また、東北メディカルメガバンク機構との共同研究で、軌道に乗せるためにスーパーコンピューター使用とソフトウエアー使用の指導をいただくことなどが必要だったため、体制構築に時間を要した。このため、1/3程度を次年度に繰り越したが、この後は順調に進めることができる。2年度目は、in silico解析のほかに、メカニズム解明に培養細胞系とマウス個体研究を取り入れるべきか否かを検討している。時間と予算が余れば対応したい。
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Research Products
(3 results)