2018 Fiscal Year Research-status Report
高齢者の筋萎縮と筋再生低下における骨格筋のエピジェネティクス機序
Project/Area Number |
18K18461
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Research Institution | Kyoto Prefectural University |
Principal Investigator |
亀井 康富 京都府立大学, 生命環境科学研究科, 教授 (70300829)
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Project Period (FY) |
2018-06-29 – 2020-03-31
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Keywords | エピジェネティクス / DNAメチル化 / サルコペニア |
Outline of Annual Research Achievements |
我が国をはじめとした多くの先進国では平均寿命(生命寿命)の延びにより超高齢社会が始まっており、健康寿命が平均寿命に近づくことが切望されている。高齢者では転倒・骨折による筋損傷後の筋再生能力が低下し、加齢性筋萎縮(サルコペニア)が顕著化する(寝たきりになる)ことが知られる。加齢により骨格筋内の遺伝子のDNAメチル化が大きく変わることが知られている。しかしながらそのメカニズムと生理的意義の詳細は不明な点が多い。本研究では、老化による骨格筋の性質変化(筋再生能低下)にDNAメチル化が関与する可能性を検証し、サルコペニア予防・改善に向けた分子基盤の確立を目指している。 研究代表者等は、様々な筋萎縮時にDNAメチル化酵素・Dnmt3aの発現が減少することを見出した。Dnmt3aの発現維持が、Dnmt3aが筋萎縮予防に関与し得る可能性を検討するために、骨格筋特異的Dnmt3a欠損マウス(Dnmt3a-KOマウス)を作出した。Dnmt3a-KOマウスの筋サテライト細胞ではDnmt3aの欠損により、TGFβファミリーのGDF5(Growth Differentiation Factor 5)遺伝子プロモーターのDNAメチル化が低下・発現増加が観察された。Dnmt3a KOの筋サテライト細胞は分化能が低下し、筋再生を抑制することが明らかとなった。これらの結果から、筋萎縮時の筋再生能低下にはDNAメチル化酵素の発現低下によるエピジェネティクス制御が示唆された。さらにゲノムワイドなDNAメチル化の網羅的解析を行い、複数の遺伝子のDNAメチル化を観察した。また老齢マウスでは、骨格筋の白筋の減少を観察したため、赤筋と白筋でのDNAメチル化の違いにも着目して研究を進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究は「研究の目的」に沿って、順調に進捗している。研究成果を本年度、英文専門誌に発表した。さらに、国内外の学会や研究会において研究成果を発表した。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究では、サルコペニア予防に関して、老化による骨格筋の性質変化(筋再生能低下)をDNAメチル化で説明を試みるものである。すなわち骨格筋機能を維持するスイッチとしてDNAメチル化が関与する可能性を検証し、サルコペニア予防・改善に向けた新しい分子基盤の確立にチャレンジする。1年目の研究で得られた結果を元に、さらに解析を進めて行く。
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Causes of Carryover |
本年度は網羅的な遺伝子解析をコンピューターを用いて行った。その結果を元に、生化学的・分子生物学的な解析を次年度に行う予定である。そのために、物品費を次年度の消耗品購入に使用する。
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Research Products
(14 results)