2020 Fiscal Year Research-status Report
東欧移民芸術家の戦時下のアメリカ社会におけるデザイン活動
Project/Area Number |
18K18475
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Research Institution | Saitama University |
Principal Investigator |
井口 壽乃 埼玉大学, 人文社会科学研究科, 教授 (00305814)
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Project Period (FY) |
2018-06-29 – 2022-03-31
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Keywords | ニュー・バウハウス / 東欧移民 / 第2次世界大戦 / ジェルジ・ケペシュ / ネイサン・ラーナー / 科学技術 / 冷戦 / 高等視覚研究所 |
Outline of Annual Research Achievements |
昨年度に引き続き、ニュー・バウハウスの教師としてシカゴに移住したハンガリー人芸術家のジェルジ・ケペシュの戦時下のデザイン活動について分析した。ケペシュは、マサチューセッツ工科大学に高等視覚研究所を開設したことで知られるが、MITにおける研究活動を通じて、彼は科学写真に新たな視覚を見出した。1951年にMITで開催されたThe New Landscape展、および同タイトルの著書(1956年)によって、今日のサイエンス・アートの基本的理論を構築した。この科学的な視覚の探求の根底には、1940年代にスクール・オブ・デザインにおけるカモフラージュのワークショップの教育経験にその源流を見いだすことができた。本研究は論文A Reconsideration of Gyorgy Kepes's the New Landscape in Art a nd Science, Journal of the Science of Design, vol.4, no.2, 2020.pp.59-66, として公表した。 さらに上記の研究を通じて新たに獲得した知見として、ケペシュの科学的デザイン理論が、冷戦時代、資本主義イデオロギーを科学と結びつけたアメリカの国家戦略のためのデザインへと展開された点があげられる。 ネイサン・ラーナーの写真およびデザイン作品について、School of the Art Institute of Chicago のJan Tichy准教授との共同研究を開始した。コロナ禍で米国への渡航が不可能なため、Tichy准教授によるラーナー作品の撮影された画像の提供を頂いた。それらの作品分析は継続中である。ユダヤ系ウクライナ移民の2世であるラーナーが、戦時下そして戦後の社会的偏見のなかで、彼の芸術活動とどのような関係があるかを引き続き調査している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
最終年度である2020年はCOVID-19の世界的拡大により、計画していた米国の博物館・資料館での調査ができなかったため研究計画を変更せざるを得なかった。School of the Art Institute of Chicago のJan Tichy准教授の協力を得つつ調査は1年延期し、研究の方法を修正した。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度、渡米が可能になった段階で東欧移民芸術家に関する現地調査を再開する予定であるが、COVID-19のために渡米が不可能であれば、インターネットで資料閲覧・収集ができるものだけで研究を進める予定である。その際、引き続きSchool of the Art Institute of Chicago のJan Tichy准教授の協力を依頼する。 ネイサン・ラーナーの遺族が所有する作品と資料に関しては、未亡人の協力により日本へ輸送を行う予定である。これにより、1次資料に基づく研究の推進が期待できる。
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Causes of Carryover |
当該年度においてCOVID-19によって渡米が不可能であったため、予定していたアメリカでの現地の調査計画を1年延長せざるを得なかったため。
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