2020 Fiscal Year Annual Research Report
Pursuing new knowledge and a change in the historigraphy concerning mutual exchanges between the worlds of art and architecture in the Meiji and Taisho periods.
Project/Area Number |
18K18476
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
今橋 映子 東京大学, 大学院総合文化研究科, 教授 (20250996)
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Project Period (FY) |
2018-06-29 – 2021-03-31
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Keywords | 近代日本美術 / 近代日本建築 / 美術批評 / 建築批評 / 岩村透 / 黒田鵬心 / 中條精一郎 / 建築と美術 |
Outline of Annual Research Achievements |
◆本研究は、従来日本近代美術史と日本近代建築史を統合して、全く新しい近代芸術史を記述しようとする試みである。これまで明治大正期の芸術史を構築する際に、建築領域を念頭に置き、それを大きな社会的潮流の中で記述する試みはほとんど無かったと言って良い。 4年間の研究は順調に推移し、その成果を刊行本の一章として公刊することができた。 ◆今橋映子(単著)『近代日本の美術思想――美術批評家・岩村透とその時代』(白水社、2021年5月刊行)は上・下巻で1504頁(120万文字)に及ぶ大著であるが、その第16章(下巻所収)に「美術と建築、技芸家と社会」と題する一章をもうけ、本科研費の成果の全てを盛り込んだ。刊行本の一章とはいえ、同章は144000字(原稿用紙360枚相当)の規模である。この書物では、明治大正期に活躍した美術批評家・岩村透が、当時の美術界と建築界を橋渡しするキーパーソンとなって、いかに建築界と美術界が人間的にも、思想的にも近接して共働していたのかを、これまでほとんど知られていなかった具体的事例から描き尽くした。主に扱ったのは――建築物としての吾楽殿(焼失)、慶應義塾大学図書館(現存)の成立事情と、東京美術学校教授たちとの関係。②吾楽会から国民美術協会へと発展する美術家=建築家ネットワークの解明 ③雑誌『美術新報』『美術週報』『国民美術』『建築雑誌』『建築工芸叢誌』『建築ト装飾』などから、当日の建築批評の言説の洗い出し ④ラスキン、モリスの建築思想の波及と、日本独自の初期社会主義との関連 ⑤「都市の美観」問題と美術家、建築家の活動 ⑥美術家と建築家の、職能人としての尊厳の問題――である。 ◆上記の一連の研究によって幸いにも、明治大正期の美術界と建築界の相互交渉史を大きく書き換え、後続の研究に資することが出来たと考えている。
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Research Products
(2 results)