2018 Fiscal Year Research-status Report
Exploratory studies on the description of the art works from comparative perspectives
Project/Area Number |
18K18477
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
秋山 聰 東京大学, 大学院人文社会系研究科(文学部), 教授 (50293113)
|
Project Period (FY) |
2018-06-29 – 2020-03-31
|
Keywords | 美術史 / 記述 / 比較美術史 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度はまず、研究代表者が造形作品の記述についての美術史学におけるこれまでの研究を把握することに務めた。とりわけ、G.Boehm/H.Pfotenhauer(ed.), Beschreibungkunst-Kunstbeschreibung (1995)やR.Rosenbergによる論文 Von der Ekphrasis zur wissenschaftlichen Bildbeschreibung, In: ZfKG 58(1995)等の精読を通じて、造形物の記述について考察する過程で、「記述」概念をもう少し広く捉えるべきことが明らかとなり、 比較対象例として聖地風景や儀礼の記述をも取り上げる方向で考察を進めることとするとともに、言語による記述の実践に加えて、造形による「記述」としての模写・複製等も視野に入れることとした。また、研究協力者(松崎照明)の助力を得て、山岳信仰関連の建築における「記述」についての調査も行った。修行や儀礼については、本来、口伝で伝えるため文字史料が少ないと言われて来た。しかし、千日回峰行者の手文や、行場を繋げて記す巡礼記、参詣曼荼羅、名所図会等を再見すると「記述」に関する問題は一変する。この視点から幾つかの調査を行ない、記述と現地との差異、記述の正確性・誇張など、その特徴を調べ、造形作品の記述の相対化作業への備えとした。更に、日本絵画史を専門とする研究協力者(佐藤康宏)は、作品記述についての実践的な調査研究を展開し、パリで展示された伊藤若冲筆「釈迦三尊像」と「動植綵絵」を実見することで、33幅の作品記述に従来不足の箇所を補った。アムステルダム国立美術館所蔵の若冲画「乗興舟」の調査は、国内外のコレクションに所蔵される異版との異同を記述するために有益な結果をもたらした。こうした調査を経て、作品記述の複眼視的な比較のための準備が整いつつある。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究代表者が部局執行部の一員に選出されてしまったため、出張による調査の日程に変更が生じる事態が生じたりする一方で、研究の途上で計画段階では想定されていなかった展開もあった。造形作品の記述とのその他の事物・事象の記述との比較研究の必要性が浮かび上がり、聖地風景や儀礼についての記述や造形による造形の記述についての調査研究にかなりの労力を割くことになったが、全体としては次年度での一応の完結に向けて、概ね順調に進行しているものと思われる。
|
Strategy for Future Research Activity |
次年度は、造形作品についての文字・造形双方による記述を考察の中心としつつ、引き続き聖地風景や儀礼についての記述についての情報も集め、地域間あるいは時代間での相違や普遍性についての探求を進めてゆきたい。また、その際、母国語教育における記述の位置づけ等についても顧慮しする方針である。
|
Causes of Carryover |
研究代表者が部局執行部の一員となったために、業務と国内出張による調査が重なり、次年度に延期となった調査があり、次年度使用額が生じる結果となった。今年度内に、計画された出張を当初どおりに遂行し、調査を進める予定である。
|