2019 Fiscal Year Research-status Report
Japanese-American Case Study on Visual Expression in the Post-Snowden Era
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18K18479
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Research Institution | Tokyo National University of Fine Arts and Music |
Principal Investigator |
山田 健二 東京藝術大学, 大学院映像研究科, 研究員 (80771899)
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Project Period (FY) |
2018-06-29 – 2021-03-31
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Keywords | ポスト・スノーデン時代 / 大量監視社会 / 社会運動における芸術表現 / ソーシャリー・エンゲイジド・アート / 映像芸術 / 映像論 / メディア論 / 現代美術 |
Outline of Annual Research Achievements |
二年計画の二年目である今年は、日米を中心に2013年以降に開始された「大量監視社会に抗する表現」や「監視と交換を生み出すための表現」をテーマとした映像一次資料をアメリカ、ニューヨークを中心に作家や活動家のスタジオに直接赴き収集を行った。同時に表現者の生の声やその表現の周辺に携わる人々の実体験を伴う言葉を記録映像として直接収集することで、資料や表現が生み出された社会的状況をより深く把握しながら研究を展開することができたのは意義深い。この一年間の調査研究で得られた知見はおおよそ以下の様にまとめられる。 日米の市民(作家、活動家)が対象としているデータを根拠とした大量監視社会によって支えられる権力構造や生政治との関係の形成は、そのデータの目的や効果が齎す時間的な有効性の見解によって大別される。一つは「データ・アーカイブとして長期間保存される事象」、他方は「データ学習から将来的に起こりうると予測される事象」への実践として、2013年以降の活動はより意識されていくこととなり、この二種類の監視の時間的構造に対峙する方法も又、それぞれに対応する様に以下の二種の方法に峻別される。 1)公共空間とサイバースペースを組み合わせた拠点の形成、又はサイバースペースの中に公共的環境を生み出し、その環境を拠点に発信される映像表現。 2)犯罪予測がされたホットスポットや、スマートシティーの端末となるロボットやデバイスとの関係性を動的な拠点として発信される映像表現。 前者は現代的歴史記述にエヴィデンスを組み込む活動として、後者は監視の構造に対する表現や学習データの錯乱を目的とした活動として特に米国での表現に顕著に表れている。その傾向が顕著なクィーンズ大学監視社会研究所がアーティストと制作した映像作品を招致しての講演会を10月に東京芸術大学で開催できたことは、大量監視社会の日米比較の見解に有意義な議論を齎した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
上記の「研究実施の概要」で述べた通り、交付申請書に記載した「研究の目的」と「研究実施計画」にもとづいて、①「日米の監視社会に対するアーティストによる映像表現の実例の一次資料の収集・整理」と②「大量監視社会に抗する映像論についての考察」を日米事例の明確な特色の違いを大別できる状態にまで進めることができたため、研究の進捗は極めて順調であったが、事故により研究データの大半を失うこととなり、2月からの新型コロナウィルス感染症の影響により米国での研究活動のリカバーが叶わなかった為「やや遅れている」とした。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究の総括的な年となる最終年度は、収集した一次資料に基づく日米の比較研究を論文として完成させることを目標とし、またそれらの活動記録の作成や発表も大きな目標の一つである。
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Causes of Carryover |
事故による研究データの喪失により、活動記録冊子の制作と印刷ができなかった為。
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