2020 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
18K18486
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Research Institution | Otsuma Women's University Junior College Division |
Principal Investigator |
大平 栄子 大妻女子大学短期大学部, 英文科, 教授 (20160616)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
佐藤 弘夫 東北大学, 文学研究科, 名誉教授 (30125570)
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Project Period (FY) |
2018-06-29 – 2022-03-31
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Keywords | 英語テクスト / 日本近代仏教 / 日印国際交流 |
Outline of Annual Research Achievements |
明治期から第二次大戦前までの時期に、日本人仏教者・仏教研究者による大量の英語テクストが書かれた。その背景には明治初年に起きた仏教の危機があり、それへの対応としての仏教の近代化への強い意欲とナショナリズムにもとづくキリスト教への対抗意識があった。 この時期、仏教復興運動はアジア各地で激化した。シカゴ宗教会議で仏教復興の必要性を訴えたスリランカのダルマパーラはじめ、インドやタイなどでも仏教復興運動が展開された。こうした共通の歴史的背景のもと、アジアの各地域において相互に密接な関連を有しながら仏教改革運動と英語テクストの作成が進行している。 一方、アジア人として初めてノーベル文学賞を受賞したインドの詩人・思想家である、ラビンドラナート・タゴールは、その平和主義と徹底した普遍主義思想により、思想家として高い評価を受け、日本の仏教者や仏教研究者たちのみならず、当時の大きな思想的潮流の形成に寄与した世界的思想家との知的交流の中心に位置していた。こうしたタゴールを起点にした交流が日本近代仏教像の形成にどのような影響を与えたかについては研究がとぼしい。 これまでタゴールの仏教観自体が研究の俎上にのぼらなかった状況下で、本研究はタゴールの膨大なエッセイや仏教文学の分析を通してその問題を探るとともに、日本の仏教者との交流がタゴールの仏教観にいかなる影響を与えたかという点についても、一定の成果をあげることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
タゴールと岡倉天心との友情、および野口米次郎との関係は比較的資料があるが、他の関係についての資料は乏しく、当時の大きな思想的潮流の形成に寄与した人々とのタゴールを起点にした知的交流が近代仏教像の形成にどのような影響を与えたかについての本格的研究は今後の課題と思われる。 この課題に取り組む第一歩として、タゴールとどのような日本人仏教者たちとの交流があるかについて以下のような内容を確認できた。 1902年、ヴィーヴェカナンダに会いにインドを訪れた天心とタゴールの友愛を通して多くの美術家のみならず仏教者・仏教研究者たちとタゴールの深い交流が展開する。さらに、タゴールは釈宗演の見解を紹介し、法然の信仰に関する姉崎の見解への反論を展開したり、かなり踏み込んだ発言をしていることも確認できた。タゴールの仏陀への尊崇の念は仏教復興への熱意に燃える日本人仏教者のみならず、アジアおよび世界の仏教者たちとをむすびつけ、世界思想家として評価されるタゴールの思想の中核の一つをなすのが仏教であることは疑いえない。タゴールの古希を祝う記念論文集、The Golden Book of Tagoreへの寄稿者は片山敏彦、尾崎喜八、大倉邦彦、姉崎正治、井上哲次郎、野口米次郎であり、彼らとの交流は明らかである。タゴールの日本訪問時の歓迎会を取り仕切った仏教学者、インド学者たちは高楠順次郎、姉崎正治、講演の通訳の鈴木大拙などであり、彼らとの交流も明らかである。真言宗の寺の出身の堀至徳はタゴールの設立したタゴール学園(後のタゴール国際大学)の初めての日本人生徒であり、タゴールは彼の生活面や心身の健康面についても面倒をみたことはタゴール研究者の多くが伝えている。また、河口慧海もタゴール学院にサンスクリットを学ぶために滞在しており、当然タゴールとの密接な交流が推測される。
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Strategy for Future Research Activity |
明治期の大きな思想的潮流の形成に寄与した人々とのタゴールを起点にした知的交流が近代仏教像の形成にどのような影響を与えたかについて考察する前提として、タゴールの仏教文学テクストの全体像を把握する。 最も優れた世界文学テクストと位置付けられるタゴールの仏教文学テクストChnadalikaにみる「ニルバナ」観と天心や小泉八雲のそれとの比較考察を行い、明治期に西洋諸国から仏教が否定的に受けとめられた原因である「ニルバナ」観について、これらの英語テクストがどのような対抗言説となりえたかについて分析する。
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Causes of Carryover |
コロナ感染症蔓延のため、予定していた内外の学会が中止になったこと、さらにインドおよび北米での調査のための出張が禁止になったために、出張費が使用できなかった。
今後の計画としては、これらの学会出張および調査出張費としての使用を計画している。
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Research Products
(8 results)