2020 Fiscal Year Research-status Report
サウンドアート学確立による20世紀アート史の書き換え
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18K18488
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Research Institution | Osaka City University |
Principal Investigator |
中川 眞 大阪市立大学, 都市研究プラザ, 特任教授 (40135637)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
中川 克志 横浜国立大学, 大学院都市イノベーション研究院, 准教授 (20464208)
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Project Period (FY) |
2018-06-29 – 2022-03-31
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Keywords | サウンドアート / アーカイブ / データベース / 身体性 |
Outline of Annual Research Achievements |
サウンドアートは1970年代に欧米日に出現したが、その多くは音楽と美術の交差領域に位置している。造形作品のなかに音響を潜ませるもの、音響オブジェが造形的であるもの、純粋に新たな音響を開発するものなど多様な表現形式があり、アカデミックな芸術教育のなかからは生まれ出ない作品・パフォーマンスが中心である。音響評論家やマニアックなノイズ愛好家などコアな人々による作品需要(あるいは受容)の広さ、深さに対して、学術的応答は貧弱な状態にとどまっており、その際の対象として、世界のなかでも際立ってユニークな日本のサウンドアートを取り上げ、アーティストと直接交渉をして、本人が所持する資料や情報を収集しデータベース化して研究の基礎資料とする。そしてサウンドアートを学的対象として位置づけ(サウンドアート学の確立)を行うのが最終の目標であるが、データベース化のための資料・情報をサウンドアーティストである鈴木昭男の自作コレクションを対象として、その整理とインデックス化並びにアーカイブとするための資料デジタル化を実施した。データベースについては既に1000件以上が蓄積されている。このデータは科研協力者の奥村一郎氏が所属する和歌山県立近代美術館と共有し、将来の一般公開を視野に入れることになっている。 一方、日本におけるサウンドアートの受容と展開に関する考察を中川克志が行い、美学会で発表する他、新音響文化研究会トークイベントなどでも実践者などとの積極的な交流を行った。また台湾におけるサウンドアートの研究も引き続き実施した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初計画では鈴木昭男の他、藤本由起夫、銅金裕司、ニシジマアツシなどのアーティストへのインタビュー、資料調査を実施する予定であったが、鈴木の資料が予想を超えて膨大であったため、他のアーティストの探索への余力が生まれなかった。そういう点では、資料的に偏りが生まれたが、逆に鈴木に関する資料は圧倒的な量となってプラスの側面となった。また、本研究は台湾をはじめアジアにおけるサウンドアートをも視野に入れているが、2020年度は新型コロナの感染拡大による渡航制限によって、現地フィールドワークができなかったのも、遅れ評価の要因となっている。
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Strategy for Future Research Activity |
鈴木昭男関係のデータベースの完成と、新型コロナが収束した場合の台湾現地調査を視野に入れながら、地道に資料の構築を図ってゆく。コロナが収束しない場合は、オンラインでできるインタビューなどを追加し、研究の遅れを取り戻したい。
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Causes of Carryover |
新型コロナの感染拡大のために移動制限が発生し、資料の実地検分や対面でのミーティングができなくなったのが理由である。次年度においては資料整理とミーティングを実施する。
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