2019 Fiscal Year Research-status Report
Creating a universally designed instruction manual and its practical use: A challenge for coexistence with technical intern trainees in the workplace
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18K18506
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Research Institution | Mie University |
Principal Investigator |
吉田 悦子 三重大学, 教養教育院, 教授 (00240276)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
大場 美和子 昭和女子大学, 文学研究科, 准教授 (50454872)
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Project Period (FY) |
2018-06-29 – 2021-03-31
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Keywords | 外国人技能実習生 / ユニバーサル・デザイン / 職場共生 / 接触場面 / やさしい日本語 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、出身や地域、日本語習熟度が異なる外国人技能実習生(以降、実習生)が就労する職場や作業場面をフィールドとし、ユニバーサルデザイン(以降、UD)対応型の作業マニュアルの作成と活用に着手し、接触場面における言語的な不均衡性を最小限に抑え、労使間コミュニケ ーションの活性化を図ることで ある。特にやさしい日本語と視覚情報による UDの発想による作業マニュアルを取り入れ、職場共生に活かすことを目指している。 本年度は、H30年度に収集した、職場での調査聞き取りやインタビュー、接触場面における会話データを整理し、マニュアルの試作版の作成を進め、修正を重ねた。マニュアルとして提供する媒体として、手帳やスマホを検討していたが、職場の衛生環境の面から、携帯して参照することが不適切であることから見送られた。しかし、職場での接触場面において活用できるマニュアル作成は喫緊の課題であり、実習生と雇用者の間で共有できる情報源として欠かせない。このため、雇用者側との話し合いを重ね、双方が共有する工場内の休憩スペースに、パネル式のマニュアルを掲示することで合意を得た。このパネル式のマニュアルには、作業する現場で活用できるような掲示物や注意書き、安全標識などを示すピクトグラム導入も含めている。そして、マニュアル全体の構成内容は、作業の要点をやさしい日本語と中国語で文字化し、作業上の注意点について作業過程ごとに必要な項目を選び、パネル12枚に分けて盛り込んでいる。現在ほぼその原型が出来上がり、職場および業者との打ち合わせを重ねて、最終版を作成中である。本年度までの研究成果について、IPrA第16回大会で口頭発表した。さらに、昨年度から継続するネパールでの共同調査(トリブバン大学ほか)と本年度の日本でのアンケート結果に基づき、国内で発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度の進捗状況は、おおむね研究実施計画に沿って進行している。2年目は、目標として、研究計画において次の段階である「マニュアルを現場の作業場面で試験的に導入し、活用後の効果や改善点を検討する。」へと進めていくことであった。マニュアルの試験的導入には未だ至っていないが、試作版のパネルには、雇用者からのフィードバックが多く寄せられ、現在改善に向けて最終的なパネル案を作成しているところである。具体的には、(1) H3 1年度(令和元年度)は、パネル式のマニュアルに変更したことで、UD対応型マニュアル作成に新たに必要となる写真データやイラスト作成、パネルを掲示する材料を検討し、修正して、業者と相談した。合わせて、日本語データの追加修正が必要な箇所も多く指摘されており、全体の文字データの見直しをした上で、中国語との二言語併用になるように作成する。 (2)本年度は、国際学会で本取り組みの成果を部分的に発表した。発表に対するフィードバックや、発表後の振り返りと今後のマニュアル作成への経過について、関係者と話し合った。その結果、フィードバックも考慮し、マニュアルが職場で活用されるように事後調査を進めていくことに専念することになった。同時に、成果報告を論文として出版する原稿執筆も一部完了し、今後は校正の段階である。 したがって、来年度に予定していた成果発表が、現実的には今年度実施できたことや、その成果をパネル作成に活かせる機会を得られたことから、総合的に捉えて、全体としての進捗には大きな遅れはなく、むしろ概ね順調に進展していると考えている。ただし、収集データの分析には課題がある。主に 実習生と通訳を介した座談会での会話、及び短い休憩時の会話から収録された、仕事内容、日本語学習、生活面に関するやりとりの文字化と翻訳データ(中国語→日本語)については今後重点的な分析が必要である。
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Strategy for Future Research Activity |
3年目は、最終年度となるが、目標として、研究計画において次の段階である「マニュアルを現場の作業場面で試験的に導入し、活用後の効果や改善点を検討する。」へと進めていく。現在、パネルによるマニュアルの試作版の完成を目指している。試作パネルは、業者に発注して、パネルとして12枚で配置して掲示できるように完成させる。試作パネルの完成までに、主に 実習生と通訳を介した座談会での会話、及び短い休憩時の会話から収録された、仕事内容、日本語学習、生活面に関するやりとりの文字化と翻訳データ(中国語→日本語)の分析に着手する。分析により、マニュアル作成に活かせなかった実習生側から寄せられた問題を整理し、その内容を精査して行く予定である。 そして、パネル完成後は、試験的にパネルによるマニュアルの活用を現場で導入し、活用後の効果や気付いた点を検討する。そのために、現場への聞き取りやアンケートによる調査が必要であるが、訪問が可能になるまでは文書でのやり取りや電話による対応を行う。実習生や雇用者、現場スタッフから、段階的にフィードバックを得て、可能な限り、内容を調整し、新規に来日する実習生(以下、新規生)到着前の完成を目指す。新型コロナウイルス感染症の影響で新規生の受け入れに変化がありうるが、実習生からのフィードバックを得ることが重要であり、双方向からのフィードバックを汲み上げて、パネルによる効果を期待し、改善につなげることが肝要である。また、関連テーマとして、外国人労働者の多様性と多文化共生の視点から、近年増加するネパール人渡日者の受け入れと、その送り出し先に関する調査に基づく研究を引き続きおこなう。技能実習生との比較対象となりうる研究内容に絞りながら進めていく予定であり、論文の完成と専門的国際ジャーナルへの投稿が課題である。
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Causes of Carryover |
(理由):多言語マニュアル作成のための調査とその経費について、見積もり等の打ち合わせが延期になっていることや、新型コロナウイルス感染症の影響で、調査を兼ねた研究打ち合わせが中止となったため。 (使用計画):令和2年度に行うパネルの作成にかかる見積もりの打ち合わせ経費およびパネルの作成費用として使用する予定である。また、パネルの作成に技術的に貢献している研究協力者への謝金に使用する予定である。
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