2019 Fiscal Year Research-status Report
消えゆく「数文化」のドキュメンテーション-エスノマセマティックス的視点から
Project/Area Number |
18K18507
|
Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
西本 希呼 京都大学, 人間・環境学研究科, 特定研究員 (10712416)
|
Project Period (FY) |
2018-06-29 – 2022-03-31
|
Keywords | 数の概念 / 多様性と普遍性 / フィールド言語学 / 生物多様性vs言語多様性 / 数の認知科学 / 数詞のない(少ない)言語 / 数えるとは何か / 民族植物学 |
Outline of Annual Research Achievements |
2019年2月に3週間ほど「数詞がない」と文献に記録されている言語話者を追い求めてボリビアへ学術調査へ赴いた。しかしながら、ボリビアは面積が広く、車で毎日運転手つきで200km走り、聞き取り調査や現地調査をしたのだが、実際その言語を使用している話者は90代以上であた。また、その言語の話者とは2019年度に再度調査へ行き、調査協力を依頼し許可を得たのだが、ボリビアは遠くかなりの予算がかかること、「ないこと」を証明することは難しいこと、実際調査の結果意外なデータが出てきたため、一定の成果はでている。私の研究課題は新規開拓領域であり、南米では物理学者や人類学者による研究はあるが、言語学的視点がかけており、言語に関わる言及は、言語科学的に誤りが非常に多く、その誤った言及が色んな書籍や論文に引用されていることも明らかになった。私は言語学をベースにして非西洋の数学や数の概念を着目しているので、言語学者としても、言語学的に誤った情報が様々な書籍や論文(欧文、和文ともに)に引用されているのは遺憾なので、きっちりと整理して、研究成果としての本と、別件で依頼が来ている出版社と協力して、本領域に関わる一般向け学術著書も出版する予定である。本年度は様々な理由から目に見える業績はないのだが、長期的視点で本科研費プロジェクトが終了するころには確実に成果物として論文・書籍・学会発表として発信できる。 現時点では、先住民の知的財産や、生物遺伝資源利用など、大学間で協定を結ばなければならなかったり村落の許可も必要あれば得なければならないため、即時に成果を発信できない状況ではある。本研究に基づいた成果をある大学で授業科目として取り扱ったところ130名の受講生がほぼ毎回9割出席という1年間で、研究成果の教育への還元にも成功していると自負する。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
研究実績概要に示したとおり、実際文献に記載されていた「数詞のない言語(少ない言語」話者をみつけて話す機会を持つだけでもそうとうの時間がかかる。前年度は三週間ほどの調査でようやく最後の3日に奇跡的に話者をみつけ調査協力は得たものの、通信手段がなく日本とボリビアの間で連絡がとりあえない。オーストラリアの研究所に関しても前年度訪問したのだが、事実事情私が対面したい言語話者を見つけるのはほぼ難しいか消滅言語である。そのため文献調査に切り替えたりしているが、文献収集もすでに消滅言語であるため情報が少ない。それに加えて、2月、3月に学会、研究会、報告会など予算を残し研究発表を予定していたが、COVID19に伴う国際情勢の変化、国内の外出自粛などの影響で全ての予定されていた研究会や学会へは行くことができず、当然ながら予定していた海外調査も行けなくなってしまったため、本年度は著しく遅れてはいるが、自分なりに柔軟に考えなおし、今できる研究を実施し、本研究に関わる本の出版はすでに決まっている。
|
Strategy for Future Research Activity |
COVID19による国際情勢が先が見えないため、予定していた海外学術調査は全ていったん延期とする。その代わり、文献調査は可能であるため、プログラミング等を用いたデータ解析などを行ったり、アンケート調査を実施したり、通信手段があり、これまで海外調査を実施してきた国の研究協力者に謝金を支払いアンケートを現地で代理に実施してもらえる状況であれば実施予定。また、昨年度までの研究で十分にある程度の成果や考察はあり、出版は確定しているので、本研究に関連する単著を一冊書き進める予定である。COVID19の感染拡大防止の観点からも在宅ワークでできる限りの最善の努力を行い、科研費という税金によって研究しているのだから、できるだけ社会貢献やアウトリーチ活動を行ったり、多少手法を変えて、本研究課題を推進していく予定である。
|
Research Products
(2 results)