2019 Fiscal Year Research-status Report
The Narrative Generation of Kabuki
Project/Area Number |
18K18509
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Research Institution | Iwate Prefectural University |
Principal Investigator |
小方 孝 岩手県立大学, ソフトウェア情報学部, 教授 (50293436)
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Project Period (FY) |
2018-06-29 – 2021-03-31
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Keywords | 歌舞伎 / 物語生成 / 芸能情報システム / 統合物語生成システム / ポストナラトロジー / 作者式法戯財録 / 世界綱目 / 綯交ぜ |
Outline of Annual Research Achievements |
当初研究計画では、本年度の主要な研究内容は、(1)歌舞伎の物語生成方法を内蔵した芸能情報システムと呼ばれるシステムのモデリング(設計)、及びそれと関連するより(2)一般的な物語生成システムでる統合物語生成システムの開発の継続であり、同時に、(3)前年度に行っていた歌舞伎に関する調査・分析を継続することである。まず継続課題の(3)については、今年度は特に、現代においては、二人の研究者(服部幸雄と渡辺保)のそれぞれ『歌舞伎の構造』と『娘道成寺』に焦点を当て、物語生成モデルの観点から検討を行い、さらに江戸時代の古典的な理論として、『作者式法戯財録』と『世界綱目』に関する詳細な調査・分析を行っている。(2)に関しては、それらの調査・分析結果及びその他の継続的な課題(歌舞伎における綯い交ぜの技法等)をもとに、幾つかの実験プログラムを作成し、芸能情報システム中のモジュールとして位置付け、さらに統合物語生成システムと一体化した形で、芸能情報システムのモデルを発展させ、その全体像の考案につなげた。さらに、歌舞伎舞踊『京鹿子娘道成寺』の調査・分析に基づき、その舞台上演構造を視覚化するシステムの試作も作成した。(1)の統合物語生成システムに関しては、主に文章生成のための概念辞書の拡張・改訂、文章に対する説明の挿入など、生成の質を向上させるための幾つのことを試みた。以上、全体として、当初の研究計画に沿った進捗があり、さらに上の『京鹿子娘道成寺』や綯い交ぜなどの理論の調査・分析とシステムに関しては、研究計画以上の成果が上がった。芸能情報システムに関しては、個々のモジュールごとのモデルと部分的実装は行っているが、全体としてのトップダウンな設計・実装が今後必要となり、次年度の課題とする。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
まず、歌舞伎に関する理論や方法の調査・分析に関しては、現代の服部幸雄と渡辺保による『歌舞伎の構造』と『娘道成寺』に中心に行い、さらに古典として、二代目並木正三によって江戸時代に書かれた『作者式法戯財録』と、同じく金井三笑が最初に執筆したと言われている『世界綱目』に関する詳細な調査・分析を行った。次に、芸能情報システムのモデル化・実装に関しては、歌舞伎における綯い交ぜの技法等をもとに、幾つかの実験プログラムを作成し、芸能情報システム中のモジュールとして位置付け、さらに歌舞伎舞踊『京鹿子娘道成寺』の調査・分析(脚本、映像、楽譜、劇場での調査などを総合的に参照)に基づき、その舞台上演構造の詳細な分析を行い、従来筆者らが開発したビジュアルな物語生成システムKOSERUBEを使用してその表現をシミュレーションするシステムを試作した。さらに統合物語生成システムと一体化した形で、芸能情報システムのモデルを発展させ、その全体像の考案につなげた。さらに、統合物語生成システムに関しては、主に文章生成のための概念辞書の拡張・改訂、文章に対する説明の挿入など、生成の質を向上させるための幾つのことを試みた。以上、全体として、当初の研究計画に沿った進捗があり、さらに上の『京鹿子娘道成寺』や綯い交ぜなどの理論の調査・分析とシステムに関しては、研究計画以上の成果が上がった。芸能情報システムに関しては、個々のモジュールごとのモデルと部分的実装は行っているが、全体としてのトップダウンな設計・実装が今後必要となり、次年度の課題とする。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度においては、これまでの成果をさらに発展させるために、主に以下の作業を行う予定である。(1)歌舞伎の調査・分析として、前年度2月頃よりコロナ感染症の流行により劇場が休館となり、実地の芝居の調査ができない状況になっており、それに伴った逆にビデオ映像や楽譜などの検討を開始した。しかし現状では、ビデオでは芝居の詳細な部分が確認できないなどの欠点があるので、劇場再開後には、映像データと実地調査を合わせて、研究を行うことが必要である。また、文献的研究に関しては、前年度においては、特に古典的な理論的文献を各種調査・分析し、これは次年度も続けるが、同時に歌舞伎や人形浄瑠璃、さらに能などの関連する物語分野の作品そのものの調査・分析に研究を進める(資料類はかなり収集した)。(2)芸能情報システムのモデル化と開発としては、これまでその全体構想はかなり煮詰め、部分的なモジュールの開発も単発的に行って来たが、次年度においてよりトップダウンな観点からその全体を設計・開発する段階に研究を進める予定である。具体的には、従来の研究で既に分割されている主要大モジュール(芸能人キャラクター、芸能作品資源、人生作品資源など)ごとに、その枠組みないし一部をシステム化し、それらの相互関係、及び下記の統合物語生成システムとの結合を行う。(3)このように統合物語生成システムに関しては上記芸能情報システムとの結合の部分の実装を行い、同時にそれそのものの質的向上やスケール拡大を目指す。後者について具体的には、歌舞伎の調査・分析をも参考にしてストーリーやプロットを生成するための破片的知識群の集成の部分を改訂・拡張し、事象生成や文生成の質を上げるために、開発済みの概念辞書における階層体系や個別の知識定義方法などの改訂(前年度から進行中)を行い、また文章を説明や描写などによって拡張する方法の開発(同じく進行中)などである。
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Causes of Carryover |
今年度は、歌舞伎研究項目の一般的な文献・資料調査やメジャーな劇場のフィールドワークが主体であり,総体として当初の予算計画を下回る結果となった。特に、2020年2月以降、コロナ感染症流行のため、予定していた劇場等実地調査や文献収集等がすべてできなくなった。2020年4月以降も同じ理由により、フィールドワーク的な作業や文献収集等に関わる作業がすべて不可能となり、計画との間にかなりのずれが生じている。主要な劇場も既に、8月頃までの公演はすべて中止という案内が出ており、先が見通せない状況である。収束と共に、今後は,継続的に文献・資料の拡大(映像や音声資料にも拡張),劇場等フィールドワークの拡大(地方の地芝居や人形浄瑠璃,能など関連ジャンルへの拡張を含む),鑑賞や開発に関わるPC等機材,必要に応じて資料調査や研究に関わる学生等アルバイト要員への謝金などを計画している。当面の間は、理論的な作業や、システム構築的な作業が多くなり、そのための機材購入も必要となる。
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Research Products
(22 results)