2022 Fiscal Year Annual Research Report
The influence of American English and language change from the founder principle perspective
Project/Area Number |
18K18511
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Research Institution | The University of Kitakyushu |
Principal Investigator |
平野 圭子 北九州市立大学, 外国語学部, 教授 (60341286)
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Project Period (FY) |
2018-06-29 – 2023-03-31
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Keywords | アングロフォンコミュニティ / 言語変化 / 創始者原理 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は日本のアングロフォン(英語母語話者)コミュニティで観察される英語の言語変化と新たな方言形成を調査し、国内の英語母語話者数では圧倒的多数を占めるアメリカの英語バラエティが言語レベルにおいてどのような影響力を持つか考察することを目的とする。言語変化を調べるため、申請者が2000年にアメリカ人とイギリス人から来日直後に収集した自然談話の言語コーパス(第1データ)と、来日後7年以上経過したアメリカ人とイギリス人から2018年以降収集した自然談話の言語コーパス(第2データ)の言語的特徴を比較し、言語変化の進み具合や方向を検証した。 2022年度は所有を表す英語表現(have got, have, got)と義務を表す英語表現(must, have got to, have to, got to)の使用状況を分析した。所有を表す英語表現の使用状況を第1データと第2データで比較分析した結果、イギリス人英語話者は第2データでイギリス的表現have gotの使用を減少させ、アメリカ的表現のhaveの使用を増加させていた。一方アメリカ人英語話者は第2データでアメリカ的表現haveの使用を減少させ、イギリス的表現have gotの使用を増加させていた。イギリス人・アメリカ人ともに、長期に亘って日本に滞在する間に他国の英語バラエティに特徴的な表現を採用するようになったことを示唆している。義務を表す英語表現の使用状況においても同様の傾向が観察された。 以上の結果は日本のアングロフォンコミュニティの「創始者集団」にあたるアメリカの英語バラエティが必ずしも優位な地位を占めているわけではないことを意味する。したがって方言接触状況下で新方言が形成される過程の一般的な原則とされる「創始者原理」は、日本のアングロフォンコミュニティ内の言語変化には適用できないことを示唆している。
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