2018 Fiscal Year Research-status Report
鍾乳石と貝化石の先端化学分析と文理融合による洞穴遺跡研究の新展開
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18K18522
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
浅海 竜司 東北大学, 理学研究科, 准教授 (00400242)
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Project Period (FY) |
2018-06-29 – 2021-03-31
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Keywords | 洞穴遺跡 / 鍾乳石 / 貝化石 / 化学分析 / 歴史気候学 / 琉球列島 / 更新世 |
Outline of Annual Research Achievements |
地質試料を用いた古気候解析は,地球環境変動を理解するうえで重要な手法の一つである.近年の技術進歩によって,過去数万年間の気候変動を高精度で復元する「鍾乳石古気候研究」が注目されている.中国やヨーロッパでは,気候変動と文明史とのリンクを解析する研究も進められているが,日本では「洞穴遺跡」の文理融合研究は進んでいない.本研究では,これまでの学術体系にとらわれず,先端的な化学分析手法を利用した文理融合の新しい洞穴遺跡研究を展開するために,遺跡物から琉球人の生活履歴と気象記録を抽出し,考古学的知見との関連性を探ることを目的としている. 初年度(2018年度)は,近年の発掘調査によって考古学的知見が蓄積されている沖縄本島南部のサキタリ洞をフィールドとして,採取された鍾乳石(石筍)や陸棲の貝化石試料(カワニナおよびマイマイ)について高時間解像度の化学分析を実施した.その結果,安定酸素炭素同位体や微量金属元素の分析によって,最終氷期最盛期および退氷期における沖縄の気温の季節変化を復元し,現代の夏季と冬季の気温との違いを復元することに成功した.また,気温復元値の信頼度を高めるために,現場の環境調査を実施して基礎データを蓄積することができた.初年度で得られた化学分析データや解析結果の一部は,日本古生物学会(2019年1月)で発表した.また,2019年度のJpGU Meeting(日本地球惑星科学連合大会,2019年5月)でも成果を公表する.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は,概ね初年度(2018年度)の研究実施計画どおりに進められた.具体的には,(1)沖縄本島のサキタリ洞穴遺跡および周辺環境の現地調査を実施し, (2)採取された多数の貝化石の化学分析から本研究目的に合致する基礎データが得られ,(3)対象年代に形成された石筍の化学分析から古気候情報を抽出し,(4)成果の一部を国内学会で発表した.(1)の現地調査は2回実施し,必要な基礎データを収集することができた.(2)および(3)では,試料の整形やクリーニング,マイクロサンプリング,続成変質の確認,化学分析までの一連の作業工程を構築した.その結果,安定酸素炭素同位体は757サンプル,微量金属元素は337サンプルを分析することができた.(4)では,分析データの解析から最終氷期最盛期および退氷期における気温の季節変化を復元することに成功し,その成果の一部を学会で発表できた.以上のように,多くの実験データが蓄積されたことや,成果の一部を着実に発信できていることから,初年度ということを踏まえると本研究は概ね順調に進展したと判断される.
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Strategy for Future Research Activity |
2018年度に引き続き,現場調査による環境データの収集と陸棲貝化石と鍾乳石の化学分析を実施する(連携研究者:植村[名古屋大学/地球化学],狩野[東京大学/地質学]).また,更新世における琉球人の生活痕の化学的シグナルや当時のより詳しい気候情報を復元するために,洞穴遺跡から発掘された潮間帯の貝化石についても化学分析を実施する.考古学・人類学的情報と併せて,琉球列島をモデルとした人類の生活史と気候変化との関連性を探るため,異分野の連携研究者(山崎[沖縄県立博物館・美術館/考古学],藤田[国立科学博物館/人類学],木村[琉球大学/ゲノム人類学],山極[琉球大学/考古学])の協力のもと,サキタリ洞や東アジア~琉球列島の考古学的・人類学的・古生物学的な情報資料を収集し,鍾乳石や貝化石の化学分析結果と併せて多角的な比較解析を行う.さらに必要であれば,分析値の時間軸をより正確に求めるために,ウラン系列年代の追加測定を実施する.随時,成果は国内外の学会などで発表するとともに,学術論文としてまとめて国際学術雑誌へ投稿する.
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Causes of Carryover |
国立台湾大学で実施予定であったウラン系列年代測定のスケジュール調整が上手く合わず次年度に予定を変更したことや,化学分析に必要な高純度ヘリウムガスの枯渇危機によって供給制限がかかり,入手が困難になったため(納期約半年).次年度において,国立台湾大学への出張旅費もしくは測定依頼費,ヘリウムガスの購入費に使用する予定である.
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Research Products
(5 results)