2019 Fiscal Year Research-status Report
SPring-8のマイクロCTを利用した福井洞窟出土縄文草創期焼骨群の種同定
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18K18533
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Research Institution | Niigata University of Health and Welfare |
Principal Investigator |
澤田 純明 新潟医療福祉大学, リハビリテーション学部, 准教授 (10374943)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
米田 穣 東京大学, 総合研究博物館, 教授 (30280712)
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Project Period (FY) |
2018-06-29 – 2021-03-31
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Keywords | CT / SPring-8 / 骨組織形態学的種同定 / 微小焼骨片 / 旧石器時代終末期 / 縄文時代草創期 / 福井洞窟 |
Outline of Annual Research Achievements |
長崎県佐世保市に所在する福井洞窟は、旧石器時代終末期から縄文時代草創期の遺跡として著名であり、国の史跡に指定されている。この洞窟からは数十点の焼けた骨片が出土しているが、日本列島の当該期の遺跡で動物骨が出土した例は少なく、福井洞窟の焼骨群はきわめて重要な資料である。出土焼骨は全て長径1cm以下の小片と化しており、肉眼観察では種の同定が不可能であった。微小な骨片の種同定には骨構造解析が有効であるが、一般的に用いられてきた観察手法では対象の骨を薄切せねばならず、貴重な文化財資料には適用できない。そこで本研究では、大型放射光施設「SPring-8」の高精細マイクロCTを利用して、福井洞窟から出土した焼骨片を非破壊的に観察し、骨構造解析に基づく動物種の同定を試みた。資料に用いたのは、骨構造解析に適した緻密質資料11点である。2019年6月と7月に、SPring-8のビームラインBL20B2のマイクロCTで資料を撮影して、画像データをコンピュータ上で合成して骨構造を復元構築し、骨長軸に対する横断像において骨組織形態の所見を得た。その結果、資料3点についてオステオンとハバース管を確認し、他4点についてハバース管を確認することができた。これらオステオンとハバース管の形態計測的検討を実施した結果、出土骨にナウマンゾウやヤベオオツノジカなどの大型動物は含まれておらず、イノシシやニホンジカなどの中型陸生哺乳類に比定されることを明らかにした。日本列島で後期更新世に生息していた大型哺乳類がいつ絶滅したのかはいまだ議論の渦中にあるが、本研究の結果は、後期更新世末葉の人びとがすでに大型哺乳類を狩猟しておらず、縄文時代に盛行する中型哺乳類狩猟の様態が成立していたことを示唆するものである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初予定していた資料の分析を概ね終了した。分析結果の一部を、日本解剖学会全国学術集会にて発表した。
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Strategy for Future Research Activity |
分析結果をまとめ、論文として投稿する。
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Causes of Carryover |
(1)今年度より資料の年代測定を進めているが、納品が次年度になるため。この経費は次年度の納品時に使用予定。(2)2020年3月に共同研究者と学会発表を予定しており、発表費用と成果発表旅費を計上していたが、COVID-19流行の影響を受け誌上開催となったことにより、発表費用と旅費を戻したため。この経費は次年度に論文投稿費用として使用予定。
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