2020 Fiscal Year Research-status Report
SPring-8のマイクロCTを利用した福井洞窟出土縄文草創期焼骨群の種同定
Project/Area Number |
18K18533
|
Research Institution | Niigata University of Health and Welfare |
Principal Investigator |
澤田 純明 新潟医療福祉大学, リハビリテーション学部, 准教授 (10374943)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
米田 穣 東京大学, 総合研究博物館, 教授 (30280712)
|
Project Period (FY) |
2018-06-29 – 2022-03-31
|
Keywords | CT / SPring-8 / 骨組織形態学的種同定 / 微小焼骨片 / 旧石器時代終末期 / 縄文時代草創期 / 福井洞窟 |
Outline of Annual Research Achievements |
長崎県佐世保市に所在する福井洞窟は、旧石器時代終末期から縄文時代草創期の遺跡として著名である。この洞窟からは数十点の焼けた骨片が出土しているが、日本列島の当該期の遺跡で動物骨が出土した例は僅少であり、福井洞窟の焼骨群はきわめて重要な価値を有する。出土焼骨は全て長径1cm以下の小片と化しており、肉眼観察では種の同定が不可能であったため、大型放射光施設「SPring-8」の高精細マイクロCTを利用して、骨構造の非破壊的な観察と形態解析を実施し、動物種の同定を試みた。まず、骨構造解析に適した緻密質資料11点を選択し、SPring-8のビームラインBL20B2のマイクロCTで撮影して、骨長軸に対する横断像の骨組織形態の所見を得た。次に、CT画像でオステオンとハバース管を確認し得た資料3点について、オステオンとハバース管の骨形態計測を実施し、求めた計測値を日本列島の更新世および完新世哺乳類群の値と比較検討した。その結果、出土骨にナウマンゾウやヤベオオツノジカなどの大型動物は含まれておらず、イノシシやニホンジカなどの中型陸生哺乳類に比定されることを明らかにした。日本列島で後期更新世に生息していた大型哺乳類がいつ絶滅したのかはいまだ議論の渦中にあるが、本研究の結果は、後期更新世末葉の人びとがすでに大型哺乳類を狩猟しておらず、縄文時代に盛行する中型哺乳類狩猟が開始されていたことを示唆するものである。本研究の結果を2020年10月に第74回日本人類学会大会で発表したほか、成果の一部を学術雑誌などで報告した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2020年度にこれまでの分析結果を補強するための補助的な実験を計画していたが、COVID-19流行の影響を受け、実施できなかった。当該実験について、2021年度の実施を予定している。
|
Strategy for Future Research Activity |
資料の分析は概ね終了しており、補助的な実験を残すのみである。全ての実験を2021年度上半期で終了し、研究成果を論文にまとめ投稿する。
|
Causes of Carryover |
2020年度にこれまでの分析結果を補強するための補助的な実験を計画していたが、COVID-19流行の影響を受け、実験施設を利用できず、計画していた実験を実施できなかった。これに伴って助成金の使用計画を一部変更し、当該実験について、2021年度に実施することとした。
|